年下彼氏の結婚指導
「でも廉堂君は今週もよく頑張ってたよ? 何も言う事がないくらい。それに今夜は皆でワーッと飲みに行くんだし、元気だして?」
「……はあ」
 労いが足りなかったという謝罪に対して、返ってきたのは不満そうな溜息である。……垂れ耳と尻尾がハリボテに見えるのは気のせいか。
 そして何故ジトリと睨まれるのだろう。解せぬ。

「──まあ、いいです。とにかく今日、俺最後なんです。優先して下さい」
 青信号に今度は手を繋がれ、流石に華子はたじろいだ。
 大きな手が自分の手をすっぽりと包み、勝手にどきまぎしてしまう。
「あ、あの……でも観月さんは?」
 咄嗟に溢れた言葉に、慌てて口を手で抑えてももう遅い。
 結芽はもう告白したのか、二人は付き合っているのか。
 気になって仕方がない関係が頭を掠め、思わず口をついて出てしまった。
 
 躊躇う華子を他所に、翔悟はパッと振り返り、そしてにんまりと口角を上げた。
(……え? 何その顔?)
 戸惑う華子を他所に、彼の機嫌は上向いたようだ。
「何もありませんよ」
 どこかしら弾んだ声音でそう告げて、翔悟は足取りも軽く交差点を歩き出した。
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