年下彼氏の結婚指導
 流石にこの場で好きだと告白する勇気はないけれど。それでも別れの挨拶だけで済ませるのは嫌だった。
 だからこれは、今の華子の精一杯の告白だ。
 翔悟は少しだけ目を見開いて、嬉しそうに花束を受け取った。

「はい。これからもよろしくお願いします」
 花束を手放した華子の手を握り、翔悟は目尻を赤らめて微笑んだ。
 それから素早く華子の肩を抱き、にっこりと笑いかける。

「皆さん。先程もお話ししたように、俺たち結婚します」
 そして突然おかしな事を言い出した。
 当然、会場は水を打ったように静まり返る。
「ちょっ、」
 焦る華子を他所に、翔悟は言葉を続けた。

「彼女を追って同じ会社に入社したけれど、早々に教育担当に抜擢されてしまっと、嬉しい反面周知のタイミングに悩んでいましたが──」
 ぐっと肩を引かれ、呆けていた華子の頬が翔悟の胸に押しつけられる。
 途端にわあっと会場が祝福に湧いた。

「やっとこの場でお知らせできて嬉しく思います。まだまだ若輩者の立場ではありますが、皆様どうぞ、末永くよろしくお願いします」
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