自信過剰な院長は既成事実を作る気満々で迫ってくるんですぅ
「最近、元気がなく大好きな散歩にも行きたがらないって、飼い主の訴えで受診した患者に対する治療」
急にスイッチが入った敬太先生が真顔で説明してくれる。
「その指導をしてくださるのが塔馬先生だよ」
前医からうつ病の可能性を指摘された犬。
犬もうつ病を患い、その数は近年増加傾向にある。犬も生きていくのに大変な時代なんだよね。
この子は、その他の原因がないか精密検査目的にクリーレンに紹介で来院した。
「倦怠感の継続って枠組みで精密検査を実施した」
電子カルテで敬太先生が説明している。
「感染症、悪性腫瘍、ホルモン異常と絞り込んで、最終的に副腎不全と診断した。その後は入院加療、軽快退院」
うつ病じゃなかったんだ。しっかり敬太先生に診断してもらえて良かったね。
話せないんだから、つらかったでしょうに。
「僕は内分泌系疾患だと思ったんです」
「それはなにを根拠に? 落とし込んだ理由を簡潔に説明してくれ」
先生たちの勉強が始まり、敬太先生の質問に朝輝先生が答えている。
治療法や投薬について朝輝先生の言葉が詰まり始めたら、敬太先生の詰問に近い質問が矢継ぎ早に飛んできた。
「なぜ? なんのために? どうやって?」
とことん追い込んで、よりよい回答を導く方法なのかな。
かなりきつそうで朝輝先生の額には、みるみるうちに汗がにじんできた。
冷や汗なのかな、落とし込みの理由を問う敬太先生からのプレッシャーがとても苦痛に感じているみたいで、朝輝先生の顔を見ていられない。
「なぁ研修医。飼い主に聞かれたら分かりませんは通用しねぇぞ」
朝輝先生は院長チームに入れるくらい優秀な人材だからか負けん気が強い。
頬がきりきり動いたと思ったら眉毛を膨らました。
「俺だって若いときは聞かれたよ、今は指導する立場だから聞いてる。なんで根拠を聞くのかは分かるよな? はい、お嬢ちゃん」
「わ、私ですか」
うつむいていた私に突然向けられた質問に、バネが伸びるように背筋が伸び上がる。
「はい、聞かせて。下向いてたら話が入ってこないだろ、答えて」
敬太先生は朝輝先生と話しつつ、私の動向を注視していたんだ。
こんな状況で分かりませんはダメだ、なにか絞り出せ。
「時間切れ、んじゃ研修医代わりに答えてお嬢ちゃんを助けてやれ」
「はい、根拠が分からないとなんとなく仕事をするようになるので」
「分かってんならやれよ!!」
雷が落ちたみたいに胸に響く。
「聞かれると答えるのつらいよな。冷や汗かいて絞り出した答えが、後々指導者になったときに役に立つ」
敬太先生が組んだ長い足をぶらぶらさせながら、頬を緩ませる。
「若いお二人さん、おっさんは鬱陶しいけど頑張れ。おっさんも鬱陶しがられてるなぁと思いながら質問しているのだよ」
やっと絞り出して答えても、『ふぅん』ってつれない生返事しかくれない先生や先輩もいた。
敬太先生は口は悪い先生だけれど、ちゃんと教えてくれるから悪い人じゃないみたい。
その後も時間が許す限り、敬太先生は付き合ってくれた。
急にスイッチが入った敬太先生が真顔で説明してくれる。
「その指導をしてくださるのが塔馬先生だよ」
前医からうつ病の可能性を指摘された犬。
犬もうつ病を患い、その数は近年増加傾向にある。犬も生きていくのに大変な時代なんだよね。
この子は、その他の原因がないか精密検査目的にクリーレンに紹介で来院した。
「倦怠感の継続って枠組みで精密検査を実施した」
電子カルテで敬太先生が説明している。
「感染症、悪性腫瘍、ホルモン異常と絞り込んで、最終的に副腎不全と診断した。その後は入院加療、軽快退院」
うつ病じゃなかったんだ。しっかり敬太先生に診断してもらえて良かったね。
話せないんだから、つらかったでしょうに。
「僕は内分泌系疾患だと思ったんです」
「それはなにを根拠に? 落とし込んだ理由を簡潔に説明してくれ」
先生たちの勉強が始まり、敬太先生の質問に朝輝先生が答えている。
治療法や投薬について朝輝先生の言葉が詰まり始めたら、敬太先生の詰問に近い質問が矢継ぎ早に飛んできた。
「なぜ? なんのために? どうやって?」
とことん追い込んで、よりよい回答を導く方法なのかな。
かなりきつそうで朝輝先生の額には、みるみるうちに汗がにじんできた。
冷や汗なのかな、落とし込みの理由を問う敬太先生からのプレッシャーがとても苦痛に感じているみたいで、朝輝先生の顔を見ていられない。
「なぁ研修医。飼い主に聞かれたら分かりませんは通用しねぇぞ」
朝輝先生は院長チームに入れるくらい優秀な人材だからか負けん気が強い。
頬がきりきり動いたと思ったら眉毛を膨らました。
「俺だって若いときは聞かれたよ、今は指導する立場だから聞いてる。なんで根拠を聞くのかは分かるよな? はい、お嬢ちゃん」
「わ、私ですか」
うつむいていた私に突然向けられた質問に、バネが伸びるように背筋が伸び上がる。
「はい、聞かせて。下向いてたら話が入ってこないだろ、答えて」
敬太先生は朝輝先生と話しつつ、私の動向を注視していたんだ。
こんな状況で分かりませんはダメだ、なにか絞り出せ。
「時間切れ、んじゃ研修医代わりに答えてお嬢ちゃんを助けてやれ」
「はい、根拠が分からないとなんとなく仕事をするようになるので」
「分かってんならやれよ!!」
雷が落ちたみたいに胸に響く。
「聞かれると答えるのつらいよな。冷や汗かいて絞り出した答えが、後々指導者になったときに役に立つ」
敬太先生が組んだ長い足をぶらぶらさせながら、頬を緩ませる。
「若いお二人さん、おっさんは鬱陶しいけど頑張れ。おっさんも鬱陶しがられてるなぁと思いながら質問しているのだよ」
やっと絞り出して答えても、『ふぅん』ってつれない生返事しかくれない先生や先輩もいた。
敬太先生は口は悪い先生だけれど、ちゃんと教えてくれるから悪い人じゃないみたい。
その後も時間が許す限り、敬太先生は付き合ってくれた。