白虎の愛に溺れ死に。
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「え…?それってどういうこと?」
衝撃の知らせは突然やってきた。
その日の夕飯を食べ終わって自室に戻ろうとしていた時、父の部屋に向かう廊下の途中で若い衆が屯していたので、何かあったのか尋ねた。
そうしたら、男たちが気まずそうに顔を見合わせるなか、少し天然で空気の読めないと言われている新入りのテツが「それが、聞いてくださいよ!莉音さん!」と興奮したように口を開いた。
「匡の兄貴が、青海組の勢力拡大のために他県で新しい組作るって!」
「は、新しい組…?」
「まだ若いのにかっけえっすよね!
この間の抗争でやられた甲斐の兄貴は一線から退くって話だから、新しい若頭も匡の兄貴になるんじゃないかって今噂してて…
…って、痛っ、なんすか!」
ヘラヘラと話すテツを「お嬢に余計なこと言うな」と言わんばかりに無言で睨んで、懐と頭にそれぞれ拳を飛ばした他の舎弟。
私と匡の関係性は周知の事実だから、みんな気を使ってくれているのだろう。
「お嬢、あの…決まったわけではないですし、我々も親父の部屋の前を通ったら断片的に話が聞こえてきただけなので…あまり気になさらず。」
「…断片的、って…どのあたりだ?」
「…え、それは…」
「“他県に組を作る“は、言ってたんでしょ?」
「う…えっと、…」
狼狽える男を父譲りの目力で睨めば、観念して「はい…」と項垂れた。