白虎の愛に溺れ死に。
毎日顔を合わせて、寂しい時には抱きしめて一緒に寝てくれた匡がいなくなることが辛くて悲しくて…次々に涙が溢れてきてしまう。
そんな時、自室の部屋がコンコンとノックされた。
こんな時間に誰だ、と狸寝入りを決め込もうとも思ったが、「莉音さん、寝てますか?」と掛けられた声が奴のものだったので、「寝てない。」とだけ返事をした。
カラカラと音を立てて引き戸が開かれる。
泣いているのがバレないように入り口に背を向けて、「なんか用?寝るところだったんだけど」とそっけなく尋ねれば、
匡は「すみません。今日中に伝えておきたいことがありまして」と声を弾ませた。
何よ、こっちは別れを悲しんでやっているっていうのに、さっぱりした声しちゃって…。
所詮、匡にとって私は親分に取り入るための道具でしかなくて、今回、晴れて私はそのお役目を終えるわけだ。
で、私に気持ちのない匡はそりゃあ清々するわけだ。
ムカつく、ムカつく。こんな奴をこんなに好きなのムカつく。
どうも思われていないのに、私ばっかり匡が好きで、匡がいなくなるのを一人悲しんでる。
「何、伝えたいことって…」
声が震えそうになるのを必死に耐えた。
どうせ匡が伝えたいことなんて舎弟衆から聞いたその件だろう。
もう知ってるよ馬鹿、ってやさぐれた心の中で悪態をつきながら匡の言葉を待つと、
「明日、大学行くんでしたよね?迎えにいった後、少しお時間いただけませんか?」
「え…?」
「お話があるんです。すでに予定があるなら今度でもいいですけど。」
「……」
やっぱり少し浮かれた口調で誘ってくる匡。
私はそんな彼とは正反対の澱んだ感情で「勿体ぶってんじゃねえよ。言うならさっさとここを出てくって言えよ。」なんて、相変わらず心の中で文句を言う。