白虎の愛に溺れ死に。





「別に用事はない。」


「あ、そうですか。じゃあ、明日のゼミは…16時終わりでしたよね。その時間あたりにお迎えにあがります。」


「分かった。」


「では、莉音さん…おやすみなさい。」


「…」


「あれ、秒で寝た?」



そんなわけあるか、馬鹿。


こっちはお通夜状態なのに、珍しいほどに上機嫌な匡との会話の温度差に腹が立ったから無視しただけだ。


用件は済んだんだから早く部屋を出ていけばいいのに、なぜかこちらに近寄ってくる匡。


泣いていることがバレないように布団を頭までかぶり直して息を潜めれば、彼の大きな掌が私の頭にふわりと乗った。






「…おやすみ、莉音」


「…っ、」




それを最後に部屋を出ていった匡。


部屋のドアが閉められたと同時、私は嗚咽を噛み殺して泣いた。



なんで、今…そんな優しく名前を呼ぶんだ。


私を置いて行くくせに、組のトップを取るために私を利用しただけのくせに…!



「ふ、っ…ううう、きょ…ぅ、匡…っ」



…好き、大好きだよ…匡。私、これから、あんたのいない人生、どうやって生きていけばいいの?


いなくなるなら…ちゃんと教えてから出て行きなさいよ、馬鹿。


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