白虎の愛に溺れ死に。
ーーーー
ーーーーーー
次の日、匡と約束した16時。
私の姿は大学ではなく、大学近くのコーヒーショップにあった。
「………はぁ、」
約束を…すっぽかしてしまった。
どうしても匡の口から例の知らせを聞きたくなくて。
こんなことをしたって状況は変わりようがないのに、我ながら子供っぽいことをしてるなって落ち込む。
…でも、本当に…気持ちの整理がまだ出来ていないんだ。
匡には散々情けない姿を見せてきた。今まで何度だって彼の胸の中で泣いた。
でも…嫌なんだ。どうせ巣立ってしまう匡に…情けなく縋って、泣きむせぶのは私のプライドが許さない。
……というか、匡が嫌でしょ。迷惑でしょ。
私の元から離れていくのは腹立たしいし、もちろんムカつく。
でも、自分の組を持つことや、若頭になることが匡の長年の目標なのだとすれば…
ずっと一緒に暮らしてきた“家族”として応援してあげたい気持ちも…一応、少しだけなら…ある。
だから、もう少し…心を落ち着かせる時間が欲しかった。
匡から報告を受けたとき、笑顔で「頑張りなよ」って言えるくらい…彼のことを諦める…心の整理をする時間が。
ホットコーヒーで手を温めながら、少しずつ中の液体を啜って…。
腕時計で時間を確認すれば、時計の針が指していたのは16時30分。
待ち合わせ時刻の前に【自分で帰るから迎えいらない】とだけメッセージを送っていたが、
どうせ「危ないから迎えに行きます」なんて私を子供扱いした過保護な連絡が来るのだろうと携帯の電源を切っていた。