白虎の愛に溺れ死に。
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「あの…匡、ごめん、なさい…」
「…は、何が?」
車が走り出して10分くらいが経った頃だろうか。
息の仕方を忘れそうなほどの沈黙に耐えかねた私は震える声で謝罪の言葉を述べた。
いつもだったら笑って甘やかしてくれるところ、匡は先ほどの男たちに向けていた殺気だったオーラを放ったまま私をぎろりと睨みつける。
怖くて、悲しくて、寂しくて。
自分がどれほど甘ったれた人間なのかを知る。
私が悪いのに。匡に甘える資格なんてないのに。それなのに、優しく抱きしめて欲しい、なんて流石に烏滸がましすぎる。
「…っ、ふ、ぅ…ごめん、なさい。約束、すっぽかして…迷惑、かけて…」
「…俺、泣く女嫌い。」
「………」
怖い。…流石にもう呆れられてしまったんだ、って怖くて仕方ない。
さっき私を連れ去ろうとした男たちに“莉音に触っていいのは俺だけだ“って言ってくれたの嬉しかったけど、きっとあれも相手を牽制するために言っただけのことなんだろう。
いい加減、自分が子供で嫌になる。
匡が離れていくのが嫌で、現実逃避したくて約束すっぽかして、その結果、迷惑をかけて…一人で何もできないガキ。
組のトップになる匡に全然相応しくない。
私がもっと大人だったら、匡は私を彼女にしてくれた?女として…見てくれた?
一生、一緒にいてくれたのかなあ?
でも、こんな私に育てたのは匡じゃん…。
いつもその綺麗な顔で誘惑して匡以外の男見られなくして、私を甘やかして甘やかして…匡がいないとダメな馬鹿女に育てたのは匡じゃないか。
だから、私こんな状況でもこんなこと思ってる。
あんなに怖い目に遭ったのに、スタンガン持って一人で戦ったのに…どうして抱きしめてくれないの?
なんて、甘ったれた、本当にどうしようもないこと。