白虎の愛に溺れ死に。
いつもの優しい匡に一気に気が緩んで、赤ん坊が泣き出す前みたいなフガフガと危ない呼吸を始めた私は…
「う、う…わぁぁぁ、…匡、…匡、怖かっ、たぁ…」
「はい、すぐに行けなくて、すみませんでした。」
「やだ、…やだ…私、やっぱり、匡がいい、匡じゃなきゃやだぁ…。私がピンチの時、助けて欲しいのは…この世で匡だけだもん…」
「…っ、」
頭に浮かんだ言葉がフィルターを通さず次々と口から出る。
こんなこと言ったらきっと匡を困らせるのに、分かってるのに、今はそんな気遣いできる余裕なんかなかった。
でも、何故だか匡は…、
「じゃあ…一生お守りしないとですね。」
なんて、拭ってもキリのない私の涙を懲りずに指で拭いながら嬉しそうに微笑んで、また私をきつく抱きしめたんだ。
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「莉音さん、降りますよ。」
「え…?ここって…」
車が到着したのは、毎年星を獲得する有名な高級ホテル。
家に帰るものとばかり思っていたから、車を降りたところで呆然と立ち尽くしていると、「行きますよ」とさりげなく腰に手を回して匡がホテルの中へとエスコートしてくれる。
すでに鍵は受け取っているようで、受付を通らずそのままエレベーターに乗り込む匡に着いて行きつつ、未だ状況にはついていけず…
「匡、…これ何?何でホテル?」と、困惑した表情のまま尋ねる。
そのタイミングで最上階まで到達したエレベーター。
ポーンと優雅な音を立てながら開いたドアから外に出た匡はポケットのカードキーを探しながら、私をチラリと見下ろして。
「…言ったでしょ。大学行ったあと時間くれって。」
そこまで言ってから「ま、すっぽかされたけどな。」と恨みがましく見下ろされたら…私は何も言えなくなる。
珍しくしゅんと項垂れる私を見て、満足したようにフッと笑みをこぼした匡は、
「ま、そのおかげで、いいくらいの時間になったんじゃないですか?」と、到着した部屋のドアにカードキーをかざした。