白虎の愛に溺れ死に。
私の気持ちなんか知らずにあまりにも自分勝手な匡になんだかいじけた気持ちになり、眉を下げ、唇をやや尖らせて睨みを効かせると、
匡は私の意図に反して楽しそうに目を細める。
優しくて、可愛い表情。
普段はクールな印象を与える涼しげな瞳が、そうやって柔らかくなるとギャップで反射的に胸が疼いてしまうんだから、本当にやめてほしい。
薄いけど形の良い唇はすぐ目の前にあって、二人きりならば…すぐにでもこの唇に食べられたい…なんて、下品なことを考えてしまう。
…匡の馬鹿…ずるい。どうせ、本当は私の考えてること分かっているくせに…反応見て遊んでるんでしょ?
はぁ、と小さくため息を出して煩悩を振り払うと、匡の肩に手のひらを乗せて、そっと耳に唇を寄せた。
「……後で、ね…?」
「…」
それだけ言って顔を離すと、一瞬きょとんとした顔を見せた匡。
でも、私の余裕のない真っ赤な顔を見るや否や、クスクスと可笑しげに笑い出して、「了解です。」と私を足の上から下ろした。
くそぅ、何笑ってんだよ…。
こっちはあんたのために必死だっていうのに…。
ようやくゆっくり夕飯を口に運びながら、隣にいる匡をジトッと睨むけど、カウンターで向けられた余裕の笑みが美しすぎてまんまとこっちが大ダメージ。
お嬢と世話係だったころとは違う、優しく慈しむような…こちらが照れてしまうほどに愛情を隠さないその微笑みは…
私を大いに戸惑わせて、せっかくの“理想のお嫁さん”像から足を踏み外させようとするから本当に危険。
はぁ、しっかりしなきゃ。
だって私…今は組長の娘、じゃなくて虎城会会長の嫁、なんだから…