白虎の愛に溺れ死に。
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「お嬢、お帰りなさい!…って、わっ!」
「莉音さん、どうされたんですか?!敵襲ですか?!」
匡に抱き抱えられて車を降りてきた私に群がる強面の大男たち。
車内で快楽の海に溺れて完全に体の力が抜けた私は彼らに返事をすることもできず、匡の首筋にただ顔を擦り寄せる。
その最小限の合図だけで意図を読み取った匡は、進路を阻む男たちを鋭い眼光で睨んで「敵襲じゃない、お嬢はお疲れだ。さっさと道を開けろ」と声を凄ませる。
彼の腕の中からちらりと男たちに視線を向けると、事情を把握したように「あ、ああ…」とやや顔を赤らめて少し気まずそうに後ずさった。
そんな彼らを見た匡は苦虫を噛み潰したように渋い顔で私を見下ろし、
「莉音さん、馬鹿どもが欲情するんで。その顔も隠しててください。」
と体に掛けられた匡のジャケットで顔まですっぽり隠すのだった。
四代目青海組組長、青海正和《おうみまさかず》の一人娘、それが私、青海莉音《おうみりおん》。
ここにきた16の時から私の世話係を務めている男、それが、今私を抱いている虎城匡《こじょうきょう》だ。
匡は昔から、組長の娘である私にとことん甘かった。
私がお願いしたことは何でも聞いてくれるし、私の自由奔放な振る舞いに小言は挟めど、本気で叱られたことも思い出せる限りなかったと思う。