白虎の愛に溺れ死に。
その後、店員が上司らしきおじさんとコソコソ話をして、しばらくすると警察がやってきた。
おいおい、おにぎり食わせておいて警察に突き出すのかよ、と幼い俺は多少ビビってしまったが、そういうわけではなく…俺を心配した彼らは、俺を保護してもらうために警察を呼んだのだった。
交番に移動して事情を聞かれ、今までにあったことを正直に話した。
残念ながら俺には母親を庇うような愛情など全くなく、自分の母親よりも遥かに信頼できる初対面の大人に、下手くそな日本語で必死に説明したのだ。
これはチャンスだと思った。
この地獄のような毎日から抜け出す、唯一のチャンス。
一通り話し終えると、2人の警官が俺に背を向けて何やら打ち合わせを始めた。
「とりあえず母親に連絡を…」
「後日児相に様子を見に行ってもらってからでも遅くない。」
「保護する、しないはデリケートだからなぁ。俺たちの専門外だし…」
コソコソと耳に入ってくる会話に、危機感を覚えた。
せっかく助けてもらえると思ったのに、このままあの地獄にまた帰るのか…。
5歳の子供ながら、ここで助けてもらえるかどうかが自分の生死を分けると理解していた。
グッと唇を噛み、人間としてのプライドを全て投げ捨てた。
凍えるような寒さの冬の夜。
コートもなく、薄汚れたトレーナーだけを身につけた俺はそれさえも脱ぎ去って床に投げた。