白虎の愛に溺れ死に。
「虎城匡です。よろしくお願いします。莉音さん」
とりあえずニコリと笑顔を貼り付けて自己紹介をすれば、親父から俺の方に視線を移した莉音は、じっと瞳の奥を覗き込む。
少し色素の薄い、吸い込まれそうな瞳があまりに無垢で、思わず目を逸らしそうになったけれど、なんとか笑顔をキープ。
一拍の間の後、スーッと大きく息を吸った莉音は次の瞬間、興奮したように目を輝かせた。
「あなたの目、…すっごく綺麗!宝石みたい!」
「………はい?」
「いいな、いいな!パパ、莉音もこの目になりたい!」
人差し指の先をこちらに向けてキャッキャとはしゃぐ少女に戸惑う俺。
初対面で最初の言葉がそれかよ、って、小学生のパワーに圧倒されつつ、とりあえず「ありがとうございます」と返しておいた。
俺はこの瞳が好きじゃない。
顔も知らない父親譲りのこの瞳を鏡を通して見るたび、母親と共に俺を痛めつけた男たちと同じ、異国の血が自分に流れていることを実感して辟易するから。
正直、この見た目と瞳に寄ってくる女は多かった。
「瞳が綺麗ね」と口説かれるたび、その奥にあるドロドロとした醜い女の真意を読み取って吐き気がした。
母親があんなだったからか…無意識に女に対して嫌悪感があったのは事実で…。
性欲を満たすために体を重ねることはあっても、誰かに抱く愛情なんて俺の中にはカケラも存在しなかった。
でも、あまりにも羨ましそうに「いいなぁ、青い目…」と何度もうっとり口にする莉音からは、そりゃあ子供だから当たり前なんだけど、本当に羨望の感情しか感じ取れず、別に嫌な気はしなかった。