白虎の愛に溺れ死に。
「この目を気に入ってもらえたなら良かったです。目は交換できねえけど、これからよろしくお願いしますね?」
クスッと笑って手を差し出すと、「あ、今バカにしたでしょ?」と眉間に皺を寄せながらも彼女の手が重ねられた。
「ね、あなた家族いないって本当?」
「…、え?」
「施設にいたんでしょ?母親に捨てられたって聞いた。」
いきなりのデリケートな質問。
そんな言葉に傷つくような性格でもないが、大抵の人間は腫れ物に触れるように、でも好奇心を隠せないというように聞いてくる。
だから、彼女の直接的な問いかけには少しだけ戸惑った。
どう返していいかも分からずに、とりあえず淡々とした声で「…はい、まあ…家族、…いないっすね。母親の顔も覚えてないし。」と答えると、莉音は「あっそう!」と興味なさげににっこりと笑って繋いだ手をグイッと手前に引いた。
「よかった!じゃあ、これから匡の所有権は私ね?」
「…え?」
「その目も交換できないけど私がもらう!匡自身も私のものね?」
「…、」
自分勝手に言い放って、俺の頬にチュッとキスをした莉音。
突然の出来事に目を広げて固まっていると、「あはは、間抜けな顔!」と楽しそうに笑われた。
強欲なお嬢様。欲しいと言えば何でも手に入ると本気で思ってる、我儘な子供。
それでも、無邪気に笑いながら欲を素直に口にする彼女がキラキラと眩しくて……、どうせ失っても構わない命なら、彼女にあげても構わないか、って素直にそう思ってしまった。