白虎の愛に溺れ死に。




「ねえ匡、匡は私より歳が上でしょ?」



起きてからしばらくベッドでゴロゴロしていれば、突然そんな当たり前のことを聞かれた。


話の意図はそれだけでは分からず、「はぁ…、そうですね?」ととりあえず相槌を打てば、莉音は小さく微笑みながら口を開いたが、その瞳はほんの少し不安が混じっているように見える。



「ヤクザなんていつ死ぬか分からない仕事だし、妻として…こんなこと言って良いはずないけど…、私、匡がいなくなったら生きていけないなぁ…って、毎日思う。」


「ふっ、そうでしょうねぇ…。そういう風に育てましたから。」


莉音の頬を親指で擦りながら少し意地悪に微笑むと、やや不服そうな表情がこちらを見上げ、俺の服の胸元をぎゅっと片手で握る。



「…育てられたからじゃない。私は…私の意思で…匡と死ぬまで一緒にいたいの。」


ムッとしたまま放たれたそんなセリフ。


そういうのが錯覚かもよ?なんて意地の悪いことを考えつつも素直に嬉しくて、にやけそうな口元に力を入れて我慢した。



「…嬉しいこと言ってくれんね。何?怖い夢でも見たの?」


「ううん、違うの。幸せだな、って思うのと同時に怖くもなるんだ。いつか突然全部無かったことになるんじゃないかって…」


「…」


不安の滲む瞳を見れば嫌でも思い出すのは、莉音の母親が亡くなった時のこと。


深夜に入院先の病院で亡くなった、と知らせを受けたのは、彼女が起きた直後のことだった。


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