白虎の愛に溺れ死に。
時は本日の昼間に遡る。
「はぁ…」
「ん、お嬢…じゃなくて、姐さん!どうかしたんすか?」
スマホを眺めながら大きなため息を吐き出すと、無駄に元気いっぱいの声で話しかけてきた舎弟のテツ。
確かにもう匡の妻であり、お嬢ではないものの…自分より年上に姐さんと呼ばれるのはなんとなく不愉快で。
じとっとテツを睨んで「…テツ、その呼び方やめてってば。」と指摘すれば、「えー、だって“莉音さん”だと若に睨まれるんですもん。」と苦笑いを浮かべた後、テツはパッと目を開いて頭を傾げた。
「で、さっきからため息ばっかですけど、どうしたんですか?」
「あー…うん。もうすぐ匡の誕生日でしょ?」
「ああ!もうそんな時期ですね。一年が過ぎるのは早いなぁ」
呑気にそんなことを言って宙を見上げるテツにまたため息をつきそうになる。
一年が過ぎるの早いなぁとか、そんなこと言ってる暇はないのだ。
誕生日、すなわちクリアすべき大きな課題があるわけで。
「今年のプレゼントはどうするんですか?一昨年はスーツで、去年は財布でしたっけ?確か莉音さんが好きなブランドに特注して…」
テツにしては珍しく察しがいい。
そう、問題は誕生日プレゼント、なのだ。
「テツ、…その件でお願いがあるの。」
「はい、特注するなら早めにメーカーに連絡して…」
「ううん、今回は…違うの!」
「え?」
完全にプレゼントの発注を頼まれるものだと思っていたらしい彼のキョトンとした顔を真っ直ぐに見つめて唇を結ぶ。
匡と結婚して初めての誕生日。今までとは違う…自分の力だけで匡にプレゼントを送りたい私は、意を決して口を開いた。
「テツ、私にバイトを紹介して!」
「……はい?」
匡の奥さんとして初めてのプレゼントは…パパから貰ったお小遣いからでもなく、匡の稼いだお金でもなく…、
私が汗水垂らして手に入れた、匡のために頑張ったお金で準備したい。