白虎の愛に溺れ死に。
コツコツと革靴を鳴らしてこちらに寄ってくる匡。
「なんだ、お前は…!今は俺がRIONちゃんを指名してるんだぞ?」
「え、いや…私はヘルプで…」
「だから、ヘルプじゃなくて指名してやるってさっきから言ってるだろ!」
「…わっ、ちょ…」
その場に中腰で立っていた私に抱きついてくる和田さんに、今は気持ち悪さよりも今後の恐ろしさに身が震える。
コツ、コツ…、
速度を変えない落ち着いた音。
…でも、確かに、その足音は怒りを増した。
「…お客さま、すぐに他の子参りますので。その子は離していただけますか?」
「あ?…おい!?」
ソファー席までやってきた匡は、言葉は柔らかいけれど力強く私のお腹に腕を回し、和田さんから私を引き剥がす。
「俺は客だぞ!この店は客にキャスト選ばせないのか?!」
「申し訳ありませんが、この子はキャストではないので。」
「…はあ?」
「ちょっとした手違いで。…そうだろ、莉音」
「…っ、」
それまで営業スマイルを貼り付けていた匡がスッと表情を消してこちらを見るから、声も出せずに固まる私。
それを見た匡はピクッと眉を顰めてから、私の肩に回した腕にぎゅっと力を入れた。
…どうしよう、匡…怒ってる。
私が匡に黙って働いてたから?それとも私が他の男に触られてたから?
どちらにせよ匡を傷つけてしまった。
匡を喜ばせたくて始めたことなのに…彼にこんな顔をさせてしまうなんて…自分の考えの浅さに情けなくなる。
「莉音、…行こうか。」
「はい…」
両肩を支えてソファー席から離れるよう誘導してくれる匡に従って踵を返したが、グン、と背後から髪を引かれた。
「…きゃ、…痛、」
「っ、莉音、」
瞬時に覆われた視界。
あっという間に包まれる彼の温度。
こんな時でもこの男は…、誰よりも早く私を守る。