白虎の愛に溺れ死に。




反射に等しいスピードで私を抱え込んだ匡は、「何してんだ、あんた…」とドスの効いた声を私の背後に投げる。


それに少し怯んだらしい和田さんは「いや…、行こうとするから止めようと思って…つい髪を…」とモゴモゴと言い訳を並べたが…もう遅い。




「和田電気株式会社社長、和田宗介。」


「え…、なんで俺の名前を…」


「…申し遅れましたが、私こういうものです。」



私を自分の背後に隠して、胸元から取り出した一枚の名刺を差し出す匡。


その名刺を目にした途端、「あ…っ、虎城、…匡、」と…。



和田さんは怯えたように震え出した。




「…この子は俺の大切な人でね。」


「っ、…わ、悪かった…謝るから…」


「謝ったらどうにかなるって考え…俺、嫌いなんだよな。」


「た、頼む…!金なら出すから…、会社に手を出すのは…、」


「…金はいらねぇ。莉音の記憶、全て抹消して俺の前から消えてくれ。」



淡々とした声でそう告げてヒョイと私を抱き上げた匡は、店中から注目を浴びていることを気にもせず、スタスタと長い足で歩みを進める。


接客フロアの奥の奥。

ギラギラと眩いシャンデリアで彩られたホールを抜けた先に現れた【VIP ROOM】の書かれたドア。



「あの…匡、私…仕事を…」


「言い訳なら、これからじっくり聞いてやるから黙ってろ」


「…」


迷わずその扉に手をかけた匡は今まで聞いたことないほど低い声で私に命令するから…「はい」と返事をすることもできずに押し黙った。

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