磁石な恋 ~嫌よ嫌よは嫌なだけ?~
「てめぇ!!汚ねぇ手で俺の大切な彼女に触りやがって!!許さねぇ!!」

顔を真っ赤にして怒り狂った悠馬だった。地面に転がった元彼に馬乗りになる。

「だめ!!」

真海の叫びに彼女の方を向いた悠馬はその隙に起き上がった元彼に殴られた。地面はコンクリートだったが風が運んだり人の靴の裏に付着してきたりして土が運ばれてきていた。雨の後なので元彼の髪や服は湿った土でわずかに汚れた。

「よくも僕の髪や服を汚してくれたな。髪は芸能人御用達の一流美容師に担当してもらっているし、服は全てオーダーメイドなんだ。僕は崇高な存在だからね。近所の小汚ない床屋でヨボヨボのじいさんに髪切ってもらって、大量生産された粗悪な服を着ているみすぼらしい君とは違うのさ。まあお互い自分の価値にふさわしい身なりをしているという点では僕も君も同じ・・・!!!」

ペラペラと悠馬を侮辱していた元彼は固まった。真海が落ちていたアイスココアを彼自慢の白いサマージャケットにぶちまけたからだ。

「これであなたが今まで私にしたこととおあいこにしてあげる。今すぐ消えて。今の私何するかわからない。」

その静かな口調には元彼を震え上がらせるほどの怒気が含まれていた。狂気と言った方がいいかもしれない。悠馬も驚いて彼女を見た。

「ふ、ふん。この僕のありがたい申し出を断るなんて、君のような愚かな女はそのくだらない男とお似合いさ。みっともない人間同士せいぜい仲良くやればいい。これ以上君達と同じ空気を吸うと僕の肺が汚れるから、避難することにするよ。」

元彼は途中木の根につまづいたりしながら退散していった。
< 59 / 118 >

この作品をシェア

pagetop