磁石な恋 ~嫌よ嫌よは嫌なだけ?~
「キスして。」

潤んだ瞳で訴えかけられ、ここがオフィスであるということは頭から吹き飛んだ。

「それに関しては言われなくてもするよ。」

誰もいない真っ暗なオフィス。クリスマスツリーの明かりが灯るその傍らで、サンタクロースが世界中の子ども達にプレゼントを配り終えてしまいそうなくらい長い時間、ふたりの唇は繋がったままだった。



「お、そうだ!」

自分の肩に預けられた真海の頭を撫でていた悠馬は急に思い出しシャキーンと立ち上がった。その拍子に真海はソファにコテンと倒れ込んでしまう。

「ちょっと!そういうとこ!急に立ったりしないでムード大切にして!」

「・・・()り。言ってくれてサンキューな。」

悠馬は床に膝をつくと怒り顔の真海にふわりと口づけた。

「・・・そういうのは好き。」

「え?」

「だから、不意打ちのキスだってば!」

猫カフェでの初めてのキス。それから唐突にキスされることに胸がキュンキュンしてしまうようになった真海であった。そのことを伝えてしまい恥ずかしくてソファに寝転んだまま悠馬に背中を向ける。

「・・・照れてんの?」

「うるさい!」

「お前ってほんと可愛いな。」

「だからうるさいって・・・!」

怒って顔だけこちらに向けた真海の唇を再び悠馬の唇が塞いだ。

「ちょっと待ってろ。」

胸がときめき過ぎて何も言えなくなってしまった真海を置いて悠馬は足早にオフィスの出入口に向かった。 電気のスイッチを操作したのでソファ周辺の電気がパッとついてまぶしい。

───工場から持ってきたサンプル品、いくつか車に忘れたとかかな?あいつそそっかしいから。


車に戻ったにしても長い時間が経った。
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