甘い恋をおしえて


きっちりと作法通りに薄茶を点てて、小ぶりな時雨羹(しぐれかん)と共に女性の前に置く。
蒸した和菓子だが、香風庵では小豆や上新粉だけでなく季節ならではのリンゴの果肉を加えている。

「美味しい!」

洋風な味が好みにあたのか、女性は大感激だ。
和菓子の説明をしていたら、また客が入ってきた。

「ユウ! 待っていたわ」

入り口に背を向けていた莉帆が、連れが来たのかと愛想よく振り向くと佑貴が立っていた。

「いらっしゃいませ」

気持ちは動転していたが、莉帆はすっと頭を下げる。
佑貴もなにも言わない。

「ユウ、このお店のお菓子とっても美味しいわ! ホテルに持って帰りたい!」

この人はホテルに泊まっているのかと、心の中に情報を止めおきながら莉帆は佑貴の注文を聞く。

「ご注文はなににいたしましょうか」
「コーヒー」

「かしこまりました」

さっと身を翻して、莉帆は厨房に入った。

「ユウってばお抹茶にしないの?」
「子どもの頃、嫌っていうほど飲まされたからね」
「まああ、それはタイヘン!」

離れた場所から会話を聞いていても、佑貴とその女性がとても親しさは伝わってくる。
見えなくてもわかるのだ。彼女と話す佑貴は莉帆には向けたこともない笑顔だろう。



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