甘い恋をおしえて
「莉帆……」
会計を終えて莉帆が厨房に下がると姉が神妙な顔をしていた。
「どうしたの、お姉さん」
「私、頑張るわ!」
「え?」
急に張り切った声をあげた姉に、莉帆は戸惑った。
「あなたの探しているような女性、なんとしても見つけてあげる!」
「あ、ありがとう」
姉はさっきまで消極的だったのに、今はやけに士気が高い。
「一日でも一時間でも早く、あんな男と別れましょう!」
張り切って力のこもった姉の言葉に、莉帆もつられて頷いた。
***
莉帆が佑貴に相応しい女性を探しているのには理由があった。
結婚してから毎月のように宮川邸に呼ばれ、義母から『妊娠したか』と聞かれるのだ。
それが嫌になってしまい、つい言ってしまった。
『私には佑貴さんの子は産めません!』
さすがに、まだ処女だとは言えなかったが義母は莉帆の態度に激怒した。
「それならさっさと息子と別れてちょうだい!」
「もちろんです。ぜひ、そうさせてください!」
ふたりとも売り言葉に買い言葉のような剣呑な雰囲気になった時、ちょうど千紘が姿を見せた。
「そんなことできないわよね、莉帆さん。お姉さんもわかっているでしょ」
香風庵への支援を打ち切るぞ言っているのだと莉帆にもすぐにわかった。
寿江も千紘の言葉に微妙な反応を見せる。
莉帆にこれでもかというほど激しい言葉を言っていたのに、急に口ごもったのだ。
「どうしても出ていきたいのなら、あなたより佑貴にピッタリの女性を見つけてちょうだい」
なにを思いついたのか、義母の寿江はとんでもないことを言いだした。
驚いた千紘があれこれとなだめるのだが、寿江は意志を曲げなかった。
子どもを産まない(産めない)莉帆とはどうあっても息子と離婚させたいらしい。
「わかりました」