悪徳転生公女の他国王太子妃生存計画~それでも王太子を愛してしまいました
パーティーではどうしてもアシュトンと一緒に主要貴族の挨拶を受けねばならず、ブティック『ラングの風』が用意した、白地にアシュトンの瞳の色であるエメラルドグリーンをあしらったプリンセスラインのドレスをその貴族たちからジロジロ見られるのが嫌だったけれど、精一杯笑顔で応えた。(カップルの場合は必ず女性に笑顔を向けるように心がけた)

顔と名前を今日の間に一致させねばならず、オフィーリアの脳内は最大限に稼働している状態だ。
令嬢たちは思った通り、冷ややかな視線でオフィーリアを一瞥する。
最大の婚姻優良物件である王太子妃の座を敵国の公女が奪ったのだ。
敵視されるのは当たり前だが、まあ敵視自体は元々のオフィーリアも、孤児院育ちの小田あずみもされることに慣れてるから特になんともなかったけれど…
ただこの国でこれから先、優雅に生きていくならあまり敵は作らないほうがいいわよね…。

なんとか味方を見つけなければならないわ。

もうかなりの挨拶を終えて、いい加減疲れ果ててきた頃だった。

「王太子妃殿下。本日はまことにおめでとう存じますわ」

目の前に王太子妃教育を1ヶ月二人三脚で一緒に頑張ってくれた先生、ポリーランド伯爵夫人がいた。

「お美しいですわ。感激いたしました」

「先生。来てくださったのね。ありがとう」

ふと横を見ると、先生とそっくりの銀糸のウェーブしている髪に灰色の瞳をした令嬢がいる。

「妃殿下。こちらは私どもの娘です。また仲良くしてやってくださいませ」

「ミリタリー・ポリーランドと申します」

さすが先生の娘。
綺麗な挨拶。

「妃殿下のひとつ下の18歳になりますわ」

「まあ。またいろいろ教えていただけるかしら?」

「ええ。ぜひ」

「では、お茶会にご招待しても?」

「はい喜んで」

よかった。ミリタリー・ポリーランド嬢。仲良くなれそうだわ。


「おい!こら。おいと言ってる」

去りゆくミリタリーを目で追っていたら、横で不満気な声がする。

「え?あっはい?」

横を見上げるとアシュトンが眉間に皺を寄せてオフィーリアを見下ろしていた。

「挨拶は終わりだ。ダンスだ。踊れるな」

そうか。今からダンス。
まだ気は抜けない。

宮廷楽団が前奏を奏で始めた。

「ほら行くぞ」

「はいっ!」
< 19 / 107 >

この作品をシェア

pagetop