悪徳転生公女の他国王太子妃生存計画~それでも王太子を愛してしまいました
「2、3日留守にしないといけなくなった」

「そうなのですか?」

「ああ。ブルトニア三国のレッドブルへ行く」

レッドブルというのは、統合されようとしているブルトニア三国の都のような場所のことだ。
今も混乱しているはずで、そこに行くということはまた何か戦いが起きるということなのかもしれない。

「出征されるのですね」

「といっても大したことはない。すぐ戻る。今回はウォルターは連れて行かないから何かあったら彼に言ってくれ」

「はい。わかりました」

大したことはないと言っても、出征なら剣を持ち、人と戦うことになるだろう。
どうしても心配になる。

小説ではこんなシーンあっただろうかと考えるけれど、特に描写はなかったような気がする。
そもそも、自分が孤児院事業など始めてしまったし、小説とはかなり変わった動きをしてしまっているのだから、周りが変わってきてもおかしくはないのだけれど…。

けれど変わってきているだけに心配になる。
小説では、アシュトンは強くて、死ぬなどということはまったく考える必要もなかったが、変わってきたということは…未来は何が起こるか予測ができないということでもある。

けれど、自分にはアシュトンに必ず戻ってきてくださいねという資格はない。

身体を重ねてもいない白い妻なのだ。

「どうかお気をつけて」

社交辞令のようにそれだけ言った。
心の中の心配は顔に出さないようにして。

「あ、ああ。では王太子宮を頼む」

「はい」

アシュトンは数十人の騎士をつれて、王宮を発ったのだった。
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