悪徳転生公女の他国王太子妃生存計画~それでも王太子を愛してしまいました


「カシュクート伯のご令息は後継者の権利を剥奪され、領地送りとなったようですわ」

アシュトンが発って3日後のことだ。エレンがどや顔でオフィーリアにお茶を出しながら言う。

「そうなの?」

あのときのあの伯爵令息のおぞましさは今でも思い出しただけでがくがくと膝が震えるくらいだ。
前世では彼氏もおらず、男性とのかかわりがほぼなかったに等しかっただけに、あんなふうに襲われそうになったこともなく、オフィーリアという女性が美しいということを肝に銘じなければならないとあのあと心に誓ったのだ。
決して危ない場所にはいかないと。

「だいたいあの令息は、妻子がいながら外に子どもをつくるのは当たり前のめちゃくちゃな男でしたからね。女性の敵ですからせいせいしますわ」

侍女の1人が憤慨している。
少し見目の良い子だから、もしかしたら言い寄られたりしていたのかもしれない。

「殿下がかなりお怒りになったということですわ。それを聞いた陛下もお怒りになり、領地送りを命じられたとか。伯爵も勘当すると怒っているらしいです」

「そりゃそうですわ。オフィーリア様が以前言われていたような方ではないことは明白ですのに、誰もかれも色目を使うのにはあきれ果てますわ」

侍女たちがかなり怒り話に花を咲かせている。

「殿下は、白い結婚というデマを流したとおっしゃったというではありませんか。きっと殿下もオフィーリア様のことをきちんとお考えなのですわ」

この王宮に来た時には半分敵だと思われていたに違いないオフィーリアが今では侍女たちにかなり慕われている。
それどころか王宮で働く者たちはみなオフィーリアの人柄を知り、オフィーリアを好きになっていた。

「あ、そうだわ。ミリヤ。お願いがあるの」

かねてから考えていたことを頼むのに一番適任だと思えるミリヤに顔を向けた。

「わたくしでできることなら何でもいたしますわ」

「料理長に少し厨房を貸してもらえないかと思って」

ミリヤはもともとは厨房の担当をしていた侍女だったと聞いているからだ。

「厨房をですか?」

不思議そうな顔をする。

「まさか、オフィーリア様が何か料理をなさるおつもりなのですか?」

「ええ。料理というか。お菓子をね」

「お菓子ですか?」

「最近殿下がよくいらっしゃるでしょう?いつもお菓子をいただくから、こちらでもおつくりしてみようかなと思って」

「まぁ!それはよいことですわ。早速料理長に打診してみますわ」
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