悪徳転生公女の他国王太子妃生存計画~それでも王太子を愛してしまいました
「それは…」

「きっといい夫婦になると思いますよ。僕は」

「キングスコート卿…?」

けれどそれはないわ。キングスコート卿は知らないのだろうか?アシュトンにとってイザベルが唯一無二の存在であることを。
こんなに勘の鋭い男が。

案外近くにいる親友の事はわかっていないということか?

「殿下がお戻りになるということであればよかったですわ」

できるだけ感情を出さないよう、注意していった。

「ええ。戻り次第、顔を出すように言っておきますよ。今回の出征はどちらかというと対談でしたからね。着衣の乱れもなく帰ってくるでしょう」

「まぁそうでしたの?」

心配が少しやわらいだら声を思わず大きく出してしまった。

キングスコート卿が笑う。

「あなたはわかりやすいですね」

「キングスコート卿!」

「心配だったと本人に直接言ってやってください。行く前はしょげていましたからね」

「え?」

アシュトンがしょげていた?

「ええ。夫婦なら妻に心配してもらえないといってしょげてもおかしくないでしょう?」

「そ、そんな…」

オフィーリアは思わず赤くなり、ウォルターはクスクスと笑った。

「そんな表情こそアイツにみせてやるべきですよ。オフィーリア嬢」

それから1時間ほどそこに居たと思うが、夕方に差し掛かってきたのでそろそろ部屋に戻ると立ち上がる。

「今日は楽しかったですよ。オフィーリア嬢。またお誘いしましょう」

「ええ。おいしいお菓子とお茶をありがとうございます」

また誘うって…。

「宮殿の下まで送りますよ」

未だになぜ誘われたのかわからないまま、エスコートされ、宮殿の下まで送ってもらった。

「殿下がお帰りになったらすぐ伝えますので。ご安心を」

他の人の目があるときは、必ずアシュトンのことを殿下と呼び、オフィーリアを妃殿下と呼ぶ。そこは徹底していた。

「ありがとうございます。キングスコート卿」

お礼を言うとオフィーリアは宮殿の中へ入っていった。

その後、ウォルターが護衛騎士に何やら言い含めていたことはオフィーリアのあずかり知らぬことだった。
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