天涯孤独となったはずなのに幸せに溢れています
翌日。
私は手作りのスイートポテトと昨日もらった紅茶を持って遊びにきた。
聞いていた通り、すぐにマンションは分かり部屋の前まで到着した。
けれどなかなかチャイムを押せない。
緊張してしまいドアの前で立ち止まったまま動けずにいた。

メッセージの受信音がして、パッとスマホを確認する。

【そろそろ着く? 駅まで迎えに行こうか?】

あ……

どうしよう、と考えていると玄関がガチャと開いた。

「扉の前からメッセージの音がしたからもしかしたら、と思ったんだ。さぁ、入って」

あれよあれよと私は部屋の中に案内された。
啓介さんの部屋は茶系のシックな色合いで統一されており、ファミリー向けの物件なのか一人暮らしとは思えないくらい広かった。キッチンも三口コンロでカウンターになっていた。

「素敵なお部屋ですね。広くて驚きました」

「茉莉花だって広いだろ?」

「うちは昔ながらの部屋なので広いけど年代ものなのでこの部屋を見てしまうと古くて恥ずかしい」

リビングのソファに座る様促され、腰掛けるが程よい硬さで座り心地がいい。
正面の窓からは公園の木が見え、今は紅葉が綺麗だ。
部屋にはいくつも観葉植物が置かれ、よく手入れが行き届いていた。

「何を飲む?」

あ……。
私はバッグの中に入った紅茶の箱を持ってきたんだった。

「昨日いただいた紅茶を一緒に飲めたら、と思って持ってきたんです」

「そうなんだね。ありがとう。使い切れるか分からないから自分の分は買わなかったんだ」

笑いながら受け取るとキッチンに持って行った。
私も後をついていき、キッチンに入る。

「私が淹れましょうか?」

「いや、大丈夫。けど茉莉花が今度淹れてくれる日のために場所を教えておくよ」

そう言うとキッチンの引き出しを開けながら説明してくれた。

「どこを開けてもいいよ。困る所も物も置いてないはずだからな」

「勝手に開けません。大丈夫です」

「それだけ茉莉花を信用してるって事だから。それに俺は茉莉花に全て知って欲しい。遠慮しないで欲しい」

そう言ってくれて嬉しい。
私ももっと知りたいし、知って欲しい。
< 100 / 167 >

この作品をシェア

pagetop