天涯孤独となったはずなのに幸せに溢れています
「さ、夕飯どうする? 外で食べてそのまま車で送ろうか」

啓介さんは食器をキッチンに持っていくと私も片付けを手伝うために立ち上がり、食器を洗い始めた。

「ありがとう」

彼は布巾を持ち、私が洗った食器をカゴに入れるとどんどん片付けていく。
隣に並んで食器を洗うだけなのに、何故か特別な気がしてさっきからの胸の高鳴りはおさまる気配がない。
水を止め、タオルで手を拭こうとしていると急に啓介さんが背中から抱き締めてきた。

「茉莉花がうちのキッチンにいるってグッとくるよ。想像がかき立てられる」

私の肩に顔を乗せ、耳元で囁いてきた。

「茉莉花、好きだよ」

その声に喉の奥がぎゅっと締まり胸が苦しくなる。
回された手に私の手を重ねると、俯き気味に小さな声がやっと出た。

「私も啓介さんが大好きです」

彼はそっと抱きしめていた手を緩め、彼の方に向きを変えさせた。
そしてまたぎゅっと抱きしめてきた。
背の高い彼に抱きしめられるとすっぽりと包み込まれてしまう。
私の頭の上でリップ音がした。
すると、こめかみや目元、耳にも彼の唇が触れる。
優しく、そっと私の反応を確認するように何度も繰り返す。反対側も同じように彼の唇は触れては離れる。
私はどうしたらいいのか分からず、彼のシャツを握りしめた。
すると彼は俯いている私の顔を覗き込むように鼻先に唇が触れてきた。
驚いてパッと顔を上げると彼の顔が間近にあり、自然と唇と唇が重なり合った。
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