天涯孤独となったはずなのに幸せに溢れています
「またこうしてご飯に誘ってもいいかな?」

「はい!」

私は嬉しくなり、元気よく返事をした。
彼はますます目尻を下げ、何度も頷いていた。
その後、母との間の懐かしい思い出話を聞かせてくれ楽しい時間を過ごせた。母の話以外にも、最近の出来事やニュースになったことなど話題は尽きずあっという間に2時間が過ぎた。

「もうこんな時間か。何だか楽しい時間はあっという間に過ぎてしまうな。そういえばお正月はどうするんだい? 毎年どうしてるんだ?」

「母が亡くなった翌年は美知おばちゃんの家に行きましたが、やはり気を遣ってしまって。なのでそれ以降は家で寝正月をしてます」

「そうか。なら今年は私と過ごさないか? 私も家族がいないし、親戚の集まりに行くと余計なことばかり言われるから行っていないんだ」

社長である限り佐倉さんが跡を継いだように後継者を求められてきたのだろう。
母を想い、一途に他の人との結婚を受け入れなかった佐倉さんの強い気持ちを感じた。
知れば知るほどに私の中で佐倉さんの印象が変わっていった。母が選んだ理由がわかった気がした。

「佐倉さんがご迷惑でなければお正月を一緒にしましょうか。母がいた頃はふたりで簡素ですがおせちを作っていたんです。今年は久しぶりに作ってみます」

「本当かい?」

これまでにないほどの笑顔で身を乗り出してきた。
頷くと破顔し、表情いっぱいで喜びを表していた。
社長として普段見かける姿は全くなかった。
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