天涯孤独となったはずなのに幸せに溢れています
翌日の日曜日は先日私が行ったようなワークショップがあるらしく啓介さんは仕事。
私は溜まった家事をこなして過ごしていた。
久しぶりにきちんと夕飯を作ろうと買い物に行き、常備菜を調理した。
いつも安治郎からもらってきているが自分でもやらないと母の味を忘れてしまいそう。昨日佐倉さんと約束したおせちのこともあるし練習も兼ね、何品も作った。

【今仕事が終わった。このあと会えない?】

16時を過ぎて啓介さんからメッセージが届いた。
このところすれ違ってばかりで全然会えていなかった。昨日も断ったばかり。
私は意を決して啓介さんに返信した。

【大丈夫です。もしよければうちに来ませんか? 夕飯の支度をしてしまったし、一緒に食べませんか】

間髪を入れず、啓介さんから「行く!」と返信が来た。
誘ったのは自分だが、今さら焦り始めた。
掃除はしたがまた気になるところを片付け始め、換気もした。
よく考えたら副菜ばかりで啓介さんのメインとなると少なく思えた。
慌てて冷凍に入っていたささみを取り出すと解凍し、チーズを挟み甘辛く味付けをした。
あっちもこっちもと狭い家の中をバタバタとしているうちに1時間経ってしまった。
そろそろ来るかも、と緊張し始めた頃ふと自分の姿を見て驚いた。
完全にオフの格好でデニムに何年もきたセーターで化粧もほぼしていなかった。
一瞬で青ざめ、慌ててクローゼットから買って間もない可愛いセーターを取り出した。ひとまずこれで少しはマシになるかもと着替え、化粧をしようと洗面所へ向かったところで部屋のチャイムが鳴らされた。

嘘……

ほぼノーメイクで、先程可愛いセーターに着替えたから余計にバランスが取れなくなった。
とはいえ仕事帰りの啓介さんを外で待たせるわけにいかない。
もう一度チャイムを鳴らされた。
観念して私はドアを開けた。
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