天涯孤独となったはずなのに幸せに溢れています
「はい。京香さんとは大学に入ってしばらくしたところでお付き合いが始まりました。お互いを思いやれるとてもいい関係でした。卒業後いつかは結婚しようと話す仲でした」
母の結婚話だなんて初めて聞いた。
私の戸籍には父親の欄は空欄になっている。母も話したがらず誰かもわからない。
ただ、どうして私にはお父さんがいないの?とダダを兼ねた時に困った顔をして教えてくれたことがあった。
『茉莉花のお父さんはとても優しくてイケメンよ。お母さんは本当に大好きだったの。あの人以上に好きになれる人はいなかったけどどうしても結婚はできなかったの。でもお母さんはお父さんから茉莉花を授けてもらって本当に感謝してるわ。茉莉花の名前はお父さんとお母さんが好きな花の名前なのよ。お母さんはお父さんの分まで茉莉花を大切にするから許してくれる?』
私の名前はお父さんと2人で考えた名前なんだ、と分かりとても嬉しかった。それ以上は教えてもらえなかったが、父にも愛されているような錯覚に陥り胸が少し温かくなったのを思い出した。
「卒業後、私たちは別の会社で働いていましたがお付き合いは順調でした。ですが、働き始めて3年目の年に私は家業を継ぐため呼び戻されました。それが今の会社です。いずれは継ぐことになるとは分かっていましたが社会経験のため外で働いていたんです」
私は食事をすることも忘れ佐倉さんの話に聞き入っていた。
「チェーン展開しており、やや規模の大きな会社の後継者だと京香さんには言いにくく、だまっていたんです……」
「え? 大学の頃には付き合っていたのなら7年くらいですよね? それに高校の頃からの知り合いだと伺ったのでそこからすると10年ですよね」
「はい。後になればなるほど言い出しにくくなってしまいました。ですが、家業を継ぐのを機に結婚しようと思ったんです」
母と付き合って7年も騙し続けていたのかと思うと私の胸の奥がモヤモヤしてきた。それは酷いのではないか。結婚まで考えていた人が隠していたなんて許せないと思った。後継者だと聞いたら母がこの人に執着するとでも思ったのか。母のこともそういう目で見ていたのかと思うとこの席にいることが不快に思えてきた。そんな私の表情を読み取ったのか慌てるように佐倉さんは弁解した。
「正直に話し、プロポーズをしようと思っていた矢先に私の父が身体を壊し、急遽私が後継指名されてしました。働いていた会社も慌ただしく退職し、京香さんともゆっくり話す時間も持てないまま時間だけが過ぎていきました」
「それで?」
つい冷たい声が出てしまった。
「やっと落ち着いた頃、京香さんに連絡をとりました。ですが彼女は私との連絡を経ち、住所も電話番号も変わっていました。会社にも行きましたが退職していました」
「そうですか」
「私は必死になり京香さんを探しました。高校や大学の頃の友人に連絡をとりましたが誰も今の彼女のことを知らなかった。ようやく聞いた風の噂で出産したことを知りました。とてもショックだった……私と連絡が途絶えてから1年も経たないうちに彼女には他の相手が出来、さらには子供を産むなんて信じられなかった」
また涙を拭きながら話し続ける佐倉さんの姿に初めて会った時とは違う感情が起こる。
7年騙し、さらには家業を継ぐため忙しいとはいえ連絡を途絶えさせたのは自分なのでは?それなのにいざ落ち着いて母と連絡をしようとした時に母が他の幸せを見つけてしまっていたのが信じられなかった?
母を馬鹿にしてるの?
母の結婚話だなんて初めて聞いた。
私の戸籍には父親の欄は空欄になっている。母も話したがらず誰かもわからない。
ただ、どうして私にはお父さんがいないの?とダダを兼ねた時に困った顔をして教えてくれたことがあった。
『茉莉花のお父さんはとても優しくてイケメンよ。お母さんは本当に大好きだったの。あの人以上に好きになれる人はいなかったけどどうしても結婚はできなかったの。でもお母さんはお父さんから茉莉花を授けてもらって本当に感謝してるわ。茉莉花の名前はお父さんとお母さんが好きな花の名前なのよ。お母さんはお父さんの分まで茉莉花を大切にするから許してくれる?』
私の名前はお父さんと2人で考えた名前なんだ、と分かりとても嬉しかった。それ以上は教えてもらえなかったが、父にも愛されているような錯覚に陥り胸が少し温かくなったのを思い出した。
「卒業後、私たちは別の会社で働いていましたがお付き合いは順調でした。ですが、働き始めて3年目の年に私は家業を継ぐため呼び戻されました。それが今の会社です。いずれは継ぐことになるとは分かっていましたが社会経験のため外で働いていたんです」
私は食事をすることも忘れ佐倉さんの話に聞き入っていた。
「チェーン展開しており、やや規模の大きな会社の後継者だと京香さんには言いにくく、だまっていたんです……」
「え? 大学の頃には付き合っていたのなら7年くらいですよね? それに高校の頃からの知り合いだと伺ったのでそこからすると10年ですよね」
「はい。後になればなるほど言い出しにくくなってしまいました。ですが、家業を継ぐのを機に結婚しようと思ったんです」
母と付き合って7年も騙し続けていたのかと思うと私の胸の奥がモヤモヤしてきた。それは酷いのではないか。結婚まで考えていた人が隠していたなんて許せないと思った。後継者だと聞いたら母がこの人に執着するとでも思ったのか。母のこともそういう目で見ていたのかと思うとこの席にいることが不快に思えてきた。そんな私の表情を読み取ったのか慌てるように佐倉さんは弁解した。
「正直に話し、プロポーズをしようと思っていた矢先に私の父が身体を壊し、急遽私が後継指名されてしました。働いていた会社も慌ただしく退職し、京香さんともゆっくり話す時間も持てないまま時間だけが過ぎていきました」
「それで?」
つい冷たい声が出てしまった。
「やっと落ち着いた頃、京香さんに連絡をとりました。ですが彼女は私との連絡を経ち、住所も電話番号も変わっていました。会社にも行きましたが退職していました」
「そうですか」
「私は必死になり京香さんを探しました。高校や大学の頃の友人に連絡をとりましたが誰も今の彼女のことを知らなかった。ようやく聞いた風の噂で出産したことを知りました。とてもショックだった……私と連絡が途絶えてから1年も経たないうちに彼女には他の相手が出来、さらには子供を産むなんて信じられなかった」
また涙を拭きながら話し続ける佐倉さんの姿に初めて会った時とは違う感情が起こる。
7年騙し、さらには家業を継ぐため忙しいとはいえ連絡を途絶えさせたのは自分なのでは?それなのにいざ落ち着いて母と連絡をしようとした時に母が他の幸せを見つけてしまっていたのが信じられなかった?
母を馬鹿にしてるの?