天涯孤独となったはずなのに幸せに溢れています
家に帰ってからまた母の思い出の箱を取り出してきて写真を見つめた。
やはり今日見かけた佐倉さんの顔と重なる。
裏に書かれていた言葉はとても重要で、断定はできないが推測される言葉だった。

【茉莉花をありがとう】

私に授けてくれて、と言う意味に解釈できる言葉に手が震える。
どうしてもっと母に聞いておかなかったのだろうと悔やまれる。
生物学上の父についてもっと聞くべきだったが、あの人以上に好きになれる人はいなかったと言っていた清々しい母の姿が思い出された。
もし母が想っていた人ならこれ以上好きになれる人がいないくらいの素敵な人だったと言うことになるが、佐倉さんも母を想っていたとなると何故別れたのかが分からない。
妊娠した母が自ら佐倉さんの元を去り、両親に反対されてもなお、一人で苦労して私を育てなければならなかったのは何故なのだろう。
もし佐倉さんが父親なら金銭的な援助も望めたのではないか。
どこかに手がかりがないかと考えるが母は潔い人。引きずることはなく常に前を向いて歩くことができる人。この写真以外手がかりはなかった。
母の友人である美知(みち)おばちゃんなら知っているかもしれない、と思い出し早速連絡をとってみることにした。
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