天涯孤独となったはずなのに幸せに溢れています
翌日。
今週は水曜まで連休だったので昨日と今日働いたらまた連休。
今日もランチタイムはとても混んでいて4人でバタバタと狭い厨房と店頭を行ったり来たりしていた。
12時半になりピークを迎えたところでスーツの男性がふたりお会計に並んでいるのに気がついた。どこかこの辺りの会社員とは違うオーラがあり、ふと視線を上げると驚いたことに竹之内さんと佐倉さんだった。
竹之内さんの手にはチキン南蛮が、佐倉さんの手にはシャケ弁当があった。

「こんにちは」

佐倉さんから話しかけられた。

「いらっしゃいませ」

私が弁当を受け取り袋に入れ、割り箸を準備していると「昨日のお弁当も美味しかったよ」と言われ驚いた。
昨日竹之内さんが買って行ったのふたり分だったので一緒に食べたのだろう。

「ありがとうございます。今日のお弁当についている金平とポテトサラダも美味しいですよ」

そう伝えると袋を手渡した。

「ありがとう。また来るよ」

後ろにも並んでいるお客さんを気にかけ、ふたりはすぐに帰って行った。
佐倉さんは社長なのにお弁当屋さんに並ぶこともあるのね、と不思議だった。
あの日気まずい気持ちで終わったが、メッセージのやり取りをして少しわだかまりがなくなった。
それよりも母の写真の裏に書かれていた言葉をまた思い出してしまい、佐倉さんの顔を見て動揺してしまった。
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