天涯孤独となったはずなのに幸せに溢れています
私はお土産を手に美知おばちゃんの家に向かった。

ピンポン。

「はーい」

元気な声がインターホンからでなく部屋の中から聞こえてきた。

「茉莉花ちゃん、いらっしゃい。待ってたわよ〜。早く上がりなさい」

「おばちゃん、急にごめんなさい」

「何言ってんのよ、ほら。上がって、上がって」

私は背中を押され、リビングへと入って行った。
何度来ても変わらない、家庭的なお家。壁には子供の写真が飾られており、よく見ると赤ちゃんの写真が増えていた。

「あ、これ? 実は陸が結婚したのよ。おめでた婚ってやつよ。それでこの前おばあちゃんになっちゃったのよ」

とても嬉しそうな顔のおばちゃんを見て私まで笑顔になる。

「陸くんがパパなの? 私のふたつ上だよね。信じられない。しかもおばちゃんがおばあちゃんだなんてビックリ」

「陸はまだ26だから若いパパよね。でも娘に甘くてメロメロなのよ。ウフフ」

26歳、母が私を産んだのもこのくらいの時。
ううん、強いて言えば佐倉さんも同い年。
陸くんがパパになれて佐倉さんがなれないわけがない。

「ほうら、座ってちょうだい。この前パエリアを教えてもらったのよ。なかなか上手にできるから食べてみてちょうだいな」

私ははっと我に帰ると、おばちゃんに手土産を渡した。

「これ少しだけどどうぞ。私が作ったスイートポテトなの。あとは紅茶。おばちゃん、紅茶が好きだったよね?」

「あら、嬉しい。ありがとう」

促されるままにダイニングの椅子に腰掛けた。
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