天涯孤独となったはずなのに幸せに溢れています
「そんな時に佐倉くんの両親が京ちゃんの会社までやってきたの」
「え? 両親?」
「そう」
美知おばちゃんはため息混じりに頷く。
「その幼なじみの子は両親にあることないこと吹き込んだみたいなの。それで将来会社を背負う息子可愛さに別れを迫ってきたの。京ちゃんの話は聞くこともなく一方的にお金を渡され姿を消すように言われたの」
「酷い! それを佐倉さんに言わなかったんですか?」
「その頃佐倉さんは忙しくてね。連絡も全然取れなくて。その頃は今みたいにスマホもなかったから連絡の手段が少なかったの。だからどんどん不安になった。両親の意見だけでなく、佐倉くん自体も別れることを望んでいるんじゃないかって」
美知おばちゃんは俯き、カップを両手で包みこむと見つめていた。
「実はね、これを見て欲しくて持ってきたの」
バッグの中から母子手帳を取り出した。間に挟まっていたものをおばちゃんに渡すと驚いていた。
「いつ知ったの?」
「ついこの前。それまでは知らなかったの。この間整理をしていたら母子手帳に挟まっていることに気がついたの。今まで何度も見てきたけど気が付かなかったのに」
おばちゃんは机の上に置かれた私の手に自分の手を重ねてきた。
「気がついているのなら話すわね。茉莉花ちゃんの想像通りだと思う。あなたは佐倉くんと京ちゃんの子供よ。別れるように言われ、京ちゃんが決意した後に気が付いたの。でも今さら佐倉くんに言えるはずもなくひとりで産むことにしたの」
「どうして? どうして産んだの?」
お母さんは佐倉さんに裏切られたのかもしれないって思わなかったの? 別れるように言われたのに子供だけ産もうと思えるものなの?
「それは京ちゃんがあなたを産みたかったからよ。どんな苦労が待っていても産みたいって強い決意があったわ。一度だって堕ろすなんて考えなかったんじゃないかしら。そのくらい佐倉くんのことが好きだったのよ」
写真の裏に書かれた言葉に嘘はなかったの?
気がつくと涙がこぼれ落ちていた。
美知おばちゃんは私の隣にやってきて腰を下ろすとティッシュで涙を拭いてくれた。
「京ちゃんは本当に茉莉花ちゃんを産みたかったのよ。産んだあとだって一度も後悔なんて無かったわよ。少なくとも私は聞いたことがない。あなただってそう感じたことはなかったんじゃない?」
うん……
どんなに忙しくしていても笑った顔しか思い出せない。貧しくても私がいなければよかったのにと言われた覚えもない。
「京ちゃんは茉莉花ちゃんが可愛くて仕方なかったのよ。産んだ事を後悔しないくらいに好きな人の子供だったのね」
私はとうとう嗚咽が漏れ出てしまう。
うぅ……うぅ……
「この写真には名前も何も書かれていない。でも京ちゃんからのラブレターみたいね」
気がつくとおばちゃんの目からも涙が溢れ出ていた。
「京ちゃんは佐倉くんの子供だと一言も言わなかったわ。もちろんそうだとは思っていたけど私も触れなかったの。だからこうして京ちゃんがちゃんと残してくれていてよかったわね」
「うん。でも佐倉さんに言うつもりはない」
「そっか……。それは茉莉花ちゃんが決めていいと思うわ。京ちゃんだったそう思ってるはずよ」
私はコクンと頷いた。
「え? 両親?」
「そう」
美知おばちゃんはため息混じりに頷く。
「その幼なじみの子は両親にあることないこと吹き込んだみたいなの。それで将来会社を背負う息子可愛さに別れを迫ってきたの。京ちゃんの話は聞くこともなく一方的にお金を渡され姿を消すように言われたの」
「酷い! それを佐倉さんに言わなかったんですか?」
「その頃佐倉さんは忙しくてね。連絡も全然取れなくて。その頃は今みたいにスマホもなかったから連絡の手段が少なかったの。だからどんどん不安になった。両親の意見だけでなく、佐倉くん自体も別れることを望んでいるんじゃないかって」
美知おばちゃんは俯き、カップを両手で包みこむと見つめていた。
「実はね、これを見て欲しくて持ってきたの」
バッグの中から母子手帳を取り出した。間に挟まっていたものをおばちゃんに渡すと驚いていた。
「いつ知ったの?」
「ついこの前。それまでは知らなかったの。この間整理をしていたら母子手帳に挟まっていることに気がついたの。今まで何度も見てきたけど気が付かなかったのに」
おばちゃんは机の上に置かれた私の手に自分の手を重ねてきた。
「気がついているのなら話すわね。茉莉花ちゃんの想像通りだと思う。あなたは佐倉くんと京ちゃんの子供よ。別れるように言われ、京ちゃんが決意した後に気が付いたの。でも今さら佐倉くんに言えるはずもなくひとりで産むことにしたの」
「どうして? どうして産んだの?」
お母さんは佐倉さんに裏切られたのかもしれないって思わなかったの? 別れるように言われたのに子供だけ産もうと思えるものなの?
「それは京ちゃんがあなたを産みたかったからよ。どんな苦労が待っていても産みたいって強い決意があったわ。一度だって堕ろすなんて考えなかったんじゃないかしら。そのくらい佐倉くんのことが好きだったのよ」
写真の裏に書かれた言葉に嘘はなかったの?
気がつくと涙がこぼれ落ちていた。
美知おばちゃんは私の隣にやってきて腰を下ろすとティッシュで涙を拭いてくれた。
「京ちゃんは本当に茉莉花ちゃんを産みたかったのよ。産んだあとだって一度も後悔なんて無かったわよ。少なくとも私は聞いたことがない。あなただってそう感じたことはなかったんじゃない?」
うん……
どんなに忙しくしていても笑った顔しか思い出せない。貧しくても私がいなければよかったのにと言われた覚えもない。
「京ちゃんは茉莉花ちゃんが可愛くて仕方なかったのよ。産んだ事を後悔しないくらいに好きな人の子供だったのね」
私はとうとう嗚咽が漏れ出てしまう。
うぅ……うぅ……
「この写真には名前も何も書かれていない。でも京ちゃんからのラブレターみたいね」
気がつくとおばちゃんの目からも涙が溢れ出ていた。
「京ちゃんは佐倉くんの子供だと一言も言わなかったわ。もちろんそうだとは思っていたけど私も触れなかったの。だからこうして京ちゃんがちゃんと残してくれていてよかったわね」
「うん。でも佐倉さんに言うつもりはない」
「そっか……。それは茉莉花ちゃんが決めていいと思うわ。京ちゃんだったそう思ってるはずよ」
私はコクンと頷いた。