天涯孤独となったはずなのに幸せに溢れています
美知おばちゃんは立ち上がると新しい紅茶を入れにキッチンへ行ってしまった。
程なくして戻ってくると、手には何枚か写真を持っていた。

「京ちゃんは真剣に付き合っていたわよ。もちろん大学は違ったけど私も高校の頃から佐倉くんを知っていたし、ご飯食べたりしていたの。だからお互いが思い合っているのも知ってわ」

「そうなんだ……」

「高校の頃から気が合って、いつ付き合うんだろうって思っていたのよ」

母の高校の頃の話をちゃんと聞くなんて不思議。
美知おばちゃんは私に写真を手渡してきた。
それは高校の文化祭での写真や卒業式、大学の頃と思われる居酒屋での写真などでどれも佐倉さんが写っていた。どの写真もふたりは隣同士で仲の良さを感じた。幸せそうな顔を見ていると私の胸まで熱く込み上げてくるものがあった。

「社会人になった頃かしら。みんなで集まって食事をした時に、佐倉くんの幼なじみが来ていたの。その子が京ちゃんをやっかんで、玉の輿だとか色々言ってきたのよ。それで佐倉くんちのことがわかってしまったの」

頷くとひと口紅茶を飲んだ。
気持ちを落ち着かせるためなのか、ほんのり甘くなっていた紅茶は身体に染み渡る。

「もちろん京ちゃんはそんなこと関係ないって言ったけど、その子は佐倉くんをそういう目で狙ってたみたいで何かあるたびに佐倉くんとは合わないと言ってきたわ。佐倉くんが京ちゃんに教えないのはそこまでの仲でないからだと反対に鼻で笑ってくる時もあったの」

「え?」

「彼女は幼なじみではなくてひとりの女として見て欲しかったんでしょうね。けれど佐倉くんにとってはそうじゃなかった。だからある意味悔しくて嫌がらせしてきたんでしょう」

佐倉さんは母が知っていたことを誰から聞いたんだろう。私は自分の知る情報と重ね合わせながら聞くことに専念する。

「京ちゃんは佐倉くん自身を見てるから、と何度もその子に話してたわ。彼のバックヤードは問題ではないと。そんな態度も彼女には気に入らなかったのね。ううん。多分佐倉くんと付き合ってることが気に入らないから何を言っても意味がないんでしょうけどね」

「うん」

それはわかる気もする。
女として見てほしいのに見てもらえない悔しさから意地悪したのだろう。
< 49 / 167 >

この作品をシェア

pagetop