お転婆姫は命がけ。兄を訪ねて三千里!
「停戦と和平条約の締結のためにパレマキリアに嫁ぐって、それ、人質ってことか?」
「そこまでは、私のような下々の者にはよくわかりません。ですが、この事は外では話してはいけないと・・・・・・」
 アイリーンは言葉を濁した。

(・・・・・・・・なる程な。それで、あの近衛隊長、この間、酔いつぶれて裏道で喧嘩なんかしてたのか。それにしても、パレマキリアの奴は一事が万事、やることが姑息で気にいらねぇな・・・・・・・・)

 カルヴァドスが考えていると、アイリーンが髪の毛を隠していたスカーフをはずした。
 ふわりとバラの香りがして、ストロベリーブロンドの髪が蝋燭の明かりに照らされて光り輝いた。
「えっ? その髪の毛・・・・・・」
 カルヴァドスの視線がアイリーンに釘付けになった。
「あ、はい。姫様と同じストロベリーブロンドなんです」

(・・・・・・・・同じなんじゃない。ヤッパリ、このお嬢さん、俺が思った通り、侍女じゃなく姫さん本人なんじゃないのか?・・・・・・・・)

「他の国では珍しくても、ストロベリーブロンドは、デロスではそんなに珍しくないんですよ」
 実際のところ、ストロベリーブロンドの髪はデロスでもあまり多くはない。アイリーンの場合は母親譲りだが、純血貴族も大抵はプラチナブロンドかブロンド、まれにローズマリーのように赤みの入ったブロンドもいるが、珍しくないというのは実は嘘に近い。
「へぇ、そうなのか? 俺は、神殿で見たお姫さん以外、ストロベリーブロンドの女はレディが初めてだけど・・・・・・」
「貴族には多いですよ。亡くなられた王妃様もストロベリーブロンドでいらっしゃいましたし」
 早く髪の色の話から話題を逸らしたくて、アイリーンは亡くなった母の事を持ち出した。
「そうなのか。まあ、いい。お姫さんのことは、俺には関係ないから・・・・・・。ところで、今晩はベッドに寝ろよ」
 カルヴァドスは言うと、敷いた絨毯の上にごゴロリと横になった。
「では、ここの宿代を私に払わせて下さい。ベッドを使わせていただいた上に、お代まで払っていただくわけには参りませんから」
 申し訳なくて、アイリーンはカルヴァドスの事を見つめて言った。
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