お転婆姫は命がけ。兄を訪ねて三千里!
 デロスの民が色白でプラチナブロンドやブロンド、ストロベリーブロンドの髪が多いのは、イエロス・トポスから移り住んだ神の民の血を濃く受け継いでいるからと言われている。

 しかし、このイエロス・トポスの血というのは、結構やっかいで、他の血が混ざるとすぐに失われ、まず髪の毛が黒や茶になり、更に他の血が混ざるほどに色白と言っても、透けるような白い肌ではなくなっていく。だから、アイリーンのように、透けるような白い肌とストロベリーブロンドの髪を持っていると言うことは、イエロス・トポスの血を色濃く継ぐ、純血のデロス人だと言うことを意味する。
 貴族の殆どは、純血を守ろうと結婚相手を同じく純血を守っている一族から選ぶようにしていたし、基本、王室は純血を守る家柄から伴侶を娶っている。それだけに、アイリーンがアルフレッドと婚約したときは、王の決定とはいえ、かなりの波紋と反感を呼んだ。
 理由は簡単で、アルフレッドの一族は、純粋なデロス人ではないからだ。
 一族は元々はタリアレーナの侯爵だったが、デロスの貴族の娘に恋をした侯爵家の跡取りは、デロスに帰化することを望んだ。デロスには侯爵という爵位がないため、デロスへの帰化を望む侯爵は、爵位を伯爵とすることを承諾し、デロスに留まることにした。それもあり、アルフレッドの黒髪は、一目で純粋なデロスの民でないことを如実に物語る特徴であり、降嫁するアイリーンが純血でないアルフレッドに嫁ぐことを快く思わない貴族は少なくなかった。

 カルヴァドスは、アイリーンの顔にかかる髪をそっとよけると、ストロベリーブロンドの髪を一房手に取り、それに口付けした。
「ん、アイジー? 疲れてるの、明日にして」
 アイリーンが小さな声で何かを囁いた。

(・・・・・・・・アイジー? どっかで聞いたことがある。なんだったけなぁ。確かに、聞いたことがあるんだが・・・・・・・・)

 カルヴァドスが考えていると、控えめなノックの音がした。
 サッと身を翻し、扉を開けると、さっき用を言いつけた男が立っていた。
「以外に早くわかりましたので、追加の情報もこちらに」
 男はメモをカルヴァドスに手渡した。
「ああ、食事を運ぶように宿の奴に言ってくれ」
「かしこまりました」
 男は言うと、一礼して去って行った。
 扉を閉めたカルヴァドスは、メモを開いた。

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