お転婆姫は命がけ。兄を訪ねて三千里!
 そこに立っていたのは、オレンジ色の髪をした二枚目の男だった。
「あなたは、昨日の・・・・・・」
「昨日は酔って喧嘩で、今日は人探しですか?」
 カルヴァドスに声をかけられ、アルフレッドは『ええ、まあ』と答えた。
「ここで会ったのも何かの縁だ。一杯どうです? 奢りますよ」
 カルヴァドスの言葉に、アルフレッドは頭を横に振った。
「いや、ご馳走にはなれません。昨日のお礼もありますから、それならば自分がご馳走します」
 アルフレッドの答えに、カルヴァドスは『真面目な人だなぁ』と言いながら、バーへのゲートをくぐり、アルフレッドをカウンターへと導いた。
 飲みたい気分だったアルフレッドは、思わず「エールをジョッキで」と、頼みそうになったが、すぐに思い直した。
「ビールをボトルで。ライムスライスを入れてくれ」
 カルヴァドスが注文をしたので、アルフレッドは「同じものを」と頼み、お金を払った。
「ここはうるさい、外にでましょう」
 カルヴァドスに導かれ、ビールのボトルを片手にアルフレッドはバーの扉から外にでた。
「随分、必死みたいでしたけど、どなたを探してるんですか?」
 カルヴァドスは問うと、アルフレッドの反応を見つめた。
「えっ、ああ、その」
「もしかして、婚約解消の原因は、あなたの浮気ですか?」
 事実ではないが、アイリーンにローズマリーとの事を知られていたというショックから立ち直れていないアルフレッドは、思わず動揺した。
「あなたでしょう? 噂の近衛隊長さんって。お姫様と二年も婚約していたのに、突然、何の説明もなく解消された」
 カルヴァドスの言葉に、身元がバレていたのだと知ったアルフレッドは、警戒の色を濃くした。
「さっき女将に尋ねてた女性。ストロベリーブロンドの女性って、あなたの浮気相手ですか?」
 肯定するのは腹立たしかったが、否定したら姫本人を捜しているとけどられるのではと、アルフレッドは答えに詰まった。
「この国じゃ、ストロベリーブロンドは珍しくないって話ではありますけど、ワザワザ婚約者と同じ色の髪の女性を愛人にするってのも、変な話ですよね?」
 カルヴァドスが愛人と確信しているようなので、アルフレッドは自分が悪者になる決心をした。
「少し、姫に似てるんですよ、彼女」
「へぇ?」
 カルヴァドスは、重い口を開いたアルフレッドの言葉に耳を傾けた。
「婚約しているとは言え、姫はまだ未成年。陛下の目もあるし、こっちの欲求を満たしてくれる事は何も出来ない。だから、姫に似た女性と・・・・・・。その先は、男のあなたなら、言わなくてもわかるでしょう?」
 アルフレッドは言葉を濁し、ビールに口を付けた。
< 75 / 317 >

この作品をシェア

pagetop