お転婆姫は命がけ。兄を訪ねて三千里!
 一番鶏が鳴く声に、カルヴァドスは目を開けた。
 出航の日の朝は早い。
 素早く着替えると、隣で眠るアイリーンを揺り起こすと、アイリーンはまだ暗い外を見つめ、眠そうに目をこすった。
「レディ、おはよう」
 声をかけられたアイリーンは、飛び上がらんばかりに驚き、それからゆっくりと現実を思い出したようだった。
「カルヴァドスさん、おはようございます」
「今日、出航だって話してあったよな?」
「はい」
「じゃあ、仕度してくれ。出航の日は朝が早いんだ。それに、他の乗組員に、レディを見咎められて揉めたくないから、直ぐに船に向かいたい」
「わ、わかりした」
 答えたものの、さすがのアイリーンも、カルヴァドスのいる部屋で着替える勇気はなかった。
「俺は女将に、朝食を貰ってくるから、その間に着替えてくれ」
 カルヴァドスは言うと、すぐに部屋から出ていった。

(・・・・・・・・カルヴァドスさん、すごく気がつく人なんだ。私が、着替えにくいだろうって、夕べも席を外してくれたし、今も。とにかく、急がなくちゃ・・・・・・・・)

 アイリーンは手早く着替えをすませ、荷物に寝間着をつっこんだ。
 それから、髪の毛にブラシを入れ、昨日と同じように、シルクのスカーフで髪の毛が見えないように、キッチリと頭を覆った。
 早い時間とは言え、パレマキリアの人間に見つかれば、カルヴァドスや船長にまで迷惑をかけてしまうかもしれないと思うと、心臓がバクバクと音をたてて居るように感じた。
 静かなノックの音に答えると、扉が開いてカルヴァドスが戻ってきた。
「早いな仕度、正直、レディの仕度は時間がかかるものだと思って早く起きすぎたかな」
 カルヴァドスは笑うと、自分の荷物に受け取ってきたサンドイッチをしまった。
「外はまだかなり暗い。手を取っても?」
 カルヴァドスの問いに、アイリーンは『はい』と答えた。
 外だけじゃなく、宿の廊下も殆ど真っ暗に近い中、カルヴァドスに手を引かれ、アイリーンは廊下を進んだ。
 その更に先には、真っ暗な階段が待っていた。
「レディ、荷物を・・・・・・」
 カルヴァドスは言うと、先に荷物を一階に下ろしてすぐに戻ってきた。
「階段は危険だから、失礼!」
 カルヴァドスは言うなり、軽々とアイリーンを抱き上げた。
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