お転婆姫は命がけ。兄を訪ねて三千里!
 カルヴァドスは船室を通り越し、サロンに入った。
 本当は、具合の悪いアイリーンのそばに付き添って看病してやりたかったが、きっと、アイリーンは逆に気を使って休めないだろうとかんがえてのことだった。

(・・・・・・・・こういう時、あの元婚約者なら、側にいても気を使わないんだろうな姫さんも。でも、俺はまだ、知り合ったばかりの赤の他人。姫さんが俺に弱みを見せるのは、俺に借りがあ?から。俺の恋人のフリをしてないと船に乗っていられないから、だからで、心から、俺に気を許してるわけじゃない。一体、どんな理由があって国のピンチの時に、身分を偽って、危険を犯してまでタリアレーナに行かないといけないのか、せめて、理由が分かれば手伝ってやれるのに・・・・・・・・)

 カルヴァドスが物思いにふけっていると、バーで姿を見せたガタイの良い船乗りがスッとサロンに入ってきた。
「ああ、お前か・・・・・・」
 考えを中断されたことは腹立たしかったが、カルヴァドスは文句は言わなかった。
 その後から、操舵を船長に押しつけてきたのか、操舵手、二等航海士、ドクター、更に数人のクルーがサロンに入り、扉を閉めた。
「次の目的地はパレマキリアで?」
 操舵手が確認した。
「ああ、荷物を下ろして、補給をするだけだ。その日のうちに出航する」
 カルヴァドスの言葉に、反駁する者はここにはいない。
「あの、お嬢さんのことですが・・・・・・」
 ガタイの良い男が言うと、ドクターが割り込んできた。
「避妊用の丸薬をご用意しましたので、忘れずに、毎日一粒飲ませてください」
 差し出されたボトルをカルヴァドスは手振りで断った。
「もし、子供が出来たらどうするつもりです!」
 ドクターの言葉に、カルヴァドスは溜息をついた。
「ドクター、念のために確認するが、子供ってのは、妖精がキスしたキャベツを食べると出来るのか? それとも、コウノトリが連れてくるのか?」
「どちらもありえません」
「なら、必要ない。俺は、姫さんとなし崩しにそんな仲になるつもりはない」
 カルヴァドスの『姫さん』と言う呼び方に全員が違和感を覚えた。
「確かに、あのお嬢さんは、デロスの王女似よく似てはいますが・・・・・・」
 ガタイの良い男の言葉に、カルヴァドスが頭を掻きながら笑い始めた。
「俺は、姫さんは本物だと思ってる」
 その場に居合わせた全員が目を見開いた。
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