お転婆姫は命がけ。兄を訪ねて三千里!
(・・・・・・・・あの細くて抱き締めたら折れてしまいそうな体で、あの細い肩の上に、政、父王の病、兄王子の病、そして、姫巫女としての務めが全てのし掛かっていたというのか? それなのに、婚約者とは距離が縮まらず、誰にも頼れず、ただ独り、白銀の狼と愛犬に護られて暮らしていたというのか? それなのに、パレマキリアが侵攻をはじめ、停戦の条件が糞王子との結婚? ふざけるな! あんなバカで鈍臭くて、しょうもない王子に姫が嫁ぐ? しかも、無理矢理に姫の唇を奪っただと!・・・・・・・・)
怒りがこみ上げ、もう少しでカルヴァドスはサロンのテーブルを打ち砕くところだった。
「わかった。下がって良い。今の話は、一切他言無用だ。漏らしたら、殺すからな!」
カルヴァドス最強の脅しだった。
実際、過去にカルヴァドスの命令を破って海の藻屑になった者が居るから、カルヴァドスが中途半端な事でそれを口にする人間でないことはドクターも分かっている。
「かしこまりました」
ドクターは一礼すると、サロンから下がっていった。
(・・・・・・・・父王が病、兄王子も病。なぜ、姫はタリアレーナに行く必要がある? 糞王子から逃げるため? 六ヶ国同盟に助けを求めるため? それなら、エクソシアでいいはずだ。なぜ、タリアレーナに?・・・・・・・・)
しばらく考えていたカルヴァドスは、ドクターが言っていた、侍医ですら、もう二年も王子の診察をしていないという言葉を思い出した。
(・・・・・・・・まさか、王子がタリアレーナにいるのか? 姫は何と言ってた? 愛しい人がいるから逢いに行くと言っていた。恋人がタリアレーナに留学したのはいつだと言った?・・・・・・・・)
カルヴァドスは必死に記憶の糸を手繰り寄せた。
(・・・・・・・・そうだ。恋人は、二年前にタリアレーナに留学した。そして、元婚約者が探していた女性も、タリアレーナに留学すると言っていた。つまり、病気だと言われている兄王子は、二年前からタリアレーナに留学している。でも、なぜタリアレーナだ? 政治や経済を学ぶなら、タリアレーナよりもエクソシアの方が近いし優秀だ。とにかく、姫は兄王子と連絡が取れなくなったか、パレマキリアの介入のせいで、自ら王子を迎えに行かなくてはならない状況に追い込まれたにちがいない。まてよ。探しに行くっていってたよな? 探すって事は、居場所が分からない? 音信不通? それ以外、姫が自ら出向く理由がない。居場所が分かっているなら、婚約者。いや、元婚約者を送ればいい。確か、兄王子の親友だったから姫と婚約したと噂で聞いたことがある。姫、一体、何が起こってるんだ? 俺には、これ以上、な何も力になれることはないかも知れない。でも、タリアレーナに着くまで、この二年分の疲れを癒して、楽しいこと、嬉しいこと、俺が幸せにしてやる。俺に惚れさせてみせる!・・・・・・・・)
カルヴァドスは、決心を固めた。