エリート外科医との政略結婚は、離婚予定につき~この愛に溺れるわけにはいきません~
その隣には、これも碧が好きな酢豚や肉団子だ。
午後に入ってから今日は帰れそうだという碧からのメッセージが届き、急いで買い物に行って料理に取りかかったのだ。
時計を見ると十八時を過ぎたばかり。
そろそろ帰ってくるはずだ。
珠希はキッチンに戻り、味噌汁の鍋に火を入れた。碧が好きな具だくさんの味噌汁で、食べる前に卵を落とすと完成だ。

「俺って今日誕生日だったっけ」

背後から声が聞こえて振り返ると、碧がコートを脱ぎながらびっくりした顔で立っていた。

「俺の好物ばっかり並んでて、誕生日とクリスマスが一気にやって来たみたいだな」

碧はテーブルに並ぶ料理をうれしそうに眺めながら声を弾ませている。
早速肉団子をつまみ食いしそうな素振りまで見せていて、珠希は大きな笑顔を向けた。
疲れて帰って来るに違いない碧のために、腕をふるった甲斐があったとホッとする。

「クリスマスには、ちゃんと別メニューを披露する予定なので、期待していてくださいね。今日は夜勤続きで忙しい碧さんに体力をつけてもらおうと思って、色々用意してみました。あ、そうだ」

珠希はコンロの火を消して、ワインセラーから一本のワインを取り出した。

「昨日、お母様が持って来て下さったんです。知り合いにワイン農家の方がいるっておっしゃってましたけど」
「ああ、白石ホテルの先代だな。厳密にいえば、先代の息子、今の社長の奥さんの親戚がフランスでは知られたワイナリーなんだ。定期的に実家に直接送ってくれるんだよ」
「そうだったんですか……ワールドワイドなおつき合いですね」

聞けば碧は白石病院で行うグループ会社の従業員の定期検診がきっかけで白石ホテルの先代と懇意になり、それ以来家族同士の付き合いが始まったそうだ。
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