エリート外科医との政略結婚は、離婚予定につき~この愛に溺れるわけにはいきません~
「俺たちの披露宴は白石ホテルだし、先代や諒太……現社長にも出席してもらいたいと思ってる。あの人たちもかなり忙しいから、どうなるのかはわからないけどな」

碧はそう言いながら珠希からワインを受け取ると「え、これってかなり貴重なボトルだな」と目を丸くしている。
例のごとくワインの知識も皆無な珠希は、ラベルを見てもさっぱりだが、碧の驚きぶりから、このワインが価値あるワインだとわかった。

「あ、このワイン今晩飲みますか? でも、かなり疲れてるみたいだからやめておいたほうがいいかも……」

帰って来たときには気づかなかったが、こうして間近で見ると碧はかなり疲れている。
顔の輪郭はシャープになっていて、顔色も悪い。
目力も感じられず、どう見ても体調がいいとは思えない。
珠希はそっと手を伸ばし、碧の額に触れた。

「熱はないようですけど、まさかまた、丸一日なにも食べてないとかじゃないですよね」

珠希は碧の顔を見上げて顔をしかめた。

「食べたよ。珠希が俺のバッグに無理矢理詰めた栄養補助食品」

碧は気まずげにつぶやき視線を泳がせる。
食事する時間が取れない日があると聞いた珠希が、碧の通勤用のバッグにスティックタイプの栄養補助食品をいくつか放り込んでおいたのだ。

「なるべくちゃんと食事をして下さいね。昨日も一昨日も帰ってこないし、心配です」

子どもに言い聞かせるように言いながら、珠希の脳裏に昨日紗雪の肩を抱いていた碧の姿がよみがえる。
胸に広がる痛みとともに、珠希はそっとうつむいた。

「……ごめん」

碧の重々しい声に、珠希は肩を揺らした。
碧が今なにに対して謝ったのか、意図が掴めず混乱したのだ。

「あの、それって……まさか」

紗雪との関係を認めて謝っているのかもしれないと思い、珠希は泣き出しそうな顔で碧を見上げた。
碧は苦笑し、珠希の額に掠めるだけのキスを落とす。
< 118 / 179 >

この作品をシェア

pagetop