エリート外科医との政略結婚は、離婚予定につき~この愛に溺れるわけにはいきません~
「一カ月以上前かな。たしかにその話はあったけど、すぐに父さんが断った」
「あ……うん。それは、間違ってないと思う」
いくら珠希が男性に慣れていなくても、恋人らしき女性を傍らに置きながら別の女性との見合いに積極的な男性が、普通だとは思えない。
それに言葉使いや所作からは成熟した部分が感じられず、なにもかもが子どもっぽく見えて仕方がなかった。
初めて会ったときにはそれほどでもなかったのだが、見合いを断られたせいで、猫をかぶるのをやめたのかもしれない。
「昔から、彼には悪い噂が多いんだ。だから見合いの話を受ける気はまったくなかったんだけど、なかなかあきらめてくれなくて、困ってたんだ」
拓真はうんざりしたように肩を落とし、ソファの背に身体を預けた。
「新薬説明会にまで現われるしで、父さんも俺も、いざとなったら珠希をどこかに逃がそうかと考えたほどだ」
「そこまで……?」
珠希は顔をしかめた。
心配のしすぎだと思いながらも、今日の大宮の様子から考えると、決して大げさな話ではないような気がした。
拓真は天井に顔を向け、こめかみを手で揉みほぐしている。
それは、それなりの覚悟を持って話すという、拓真の無意識の合図だ。
父の後を継ぐ決意を口にしたときもそうだったと、珠希は思い出した。
「なあ、珠希」
「な、なに?」
拓真の声がワントーン下がり、部屋の空気が重苦しいものに変わる。
珠希は姿勢を正した。
「初めに言っておくけど、和合製薬の経営状態に問題はない。妙な勘違いはさっさと捨てろ」
拓真の話は、珠希の予想をはるかに超えたものだった。
途中何度も問い返し、頭の中を整理し確認しながらの一時間は思いの外ハードで、終盤は今なにを聞かされてももう驚くことはないと思うほどの内容だった。
珠希はひととおり話を聞き終えたあと、休憩したいと言って、バルコニーに出た。
冷え切った空気の中星空を見上げ、今聞いたばかりの話を順を追って整理した。
「あ……うん。それは、間違ってないと思う」
いくら珠希が男性に慣れていなくても、恋人らしき女性を傍らに置きながら別の女性との見合いに積極的な男性が、普通だとは思えない。
それに言葉使いや所作からは成熟した部分が感じられず、なにもかもが子どもっぽく見えて仕方がなかった。
初めて会ったときにはそれほどでもなかったのだが、見合いを断られたせいで、猫をかぶるのをやめたのかもしれない。
「昔から、彼には悪い噂が多いんだ。だから見合いの話を受ける気はまったくなかったんだけど、なかなかあきらめてくれなくて、困ってたんだ」
拓真はうんざりしたように肩を落とし、ソファの背に身体を預けた。
「新薬説明会にまで現われるしで、父さんも俺も、いざとなったら珠希をどこかに逃がそうかと考えたほどだ」
「そこまで……?」
珠希は顔をしかめた。
心配のしすぎだと思いながらも、今日の大宮の様子から考えると、決して大げさな話ではないような気がした。
拓真は天井に顔を向け、こめかみを手で揉みほぐしている。
それは、それなりの覚悟を持って話すという、拓真の無意識の合図だ。
父の後を継ぐ決意を口にしたときもそうだったと、珠希は思い出した。
「なあ、珠希」
「な、なに?」
拓真の声がワントーン下がり、部屋の空気が重苦しいものに変わる。
珠希は姿勢を正した。
「初めに言っておくけど、和合製薬の経営状態に問題はない。妙な勘違いはさっさと捨てろ」
拓真の話は、珠希の予想をはるかに超えたものだった。
途中何度も問い返し、頭の中を整理し確認しながらの一時間は思いの外ハードで、終盤は今なにを聞かされてももう驚くことはないと思うほどの内容だった。
珠希はひととおり話を聞き終えたあと、休憩したいと言って、バルコニーに出た。
冷え切った空気の中星空を見上げ、今聞いたばかりの話を順を追って整理した。