エリート外科医との政略結婚は、離婚予定につき~この愛に溺れるわけにはいきません~
一カ月程前、珠希の父と面識がある大宮の親戚を通じて、大宮との見合いの話が持ち込まれた。
今年の夏頃、拓真と麻耶と三人で買い物を楽しんでいる珠希を見かけたのがきっかけで、大宮は珠希に好意を寄せるようになった。
大宮の悪い噂を耳にしていた珠希の両親も拓真も受ける気はさらさらなく、その場ですぐに断った。
悪い噂の多くは女性問題で、内容については言葉にするのもためらうほどの呆れた行状ばかり。
それ以外にも医師としての力を疑われるトラブルを起こしたことがあり、人としても医師としても信頼できず、珠希の結婚相手として考えられる可能性はゼロだった。
ところが大宮はあきらめず、後日行われた和合製薬の新薬説明会に押しかけてまで、珠希との見合いを求めた。
そこで珠希の父は、見合いを断るために「珠希には結婚を考えている相手がいる」とでまかせを口にした。
それが大宮が言っていた〝見え透いた嘘〟だ。
いくつもの病院から医師や薬剤師が参加していたその説明会には、白石病院からは碧が、そして宗崎病院からは院長である碧の父も来ていた。
説明会終了後、碧と碧の父は、珠希との見合いを父と拓真に迫る大宮の様子をたまたま見かけた。
大宮にはが立ち去った後、実は珠希には結婚を考えている男性などいないことがばれると困ると話していた珠希の父と拓真の会話を聞きつけた碧の父が、珠希の父に声をかけた。
『もしも娘さんに結婚を考えている相手がいらっしゃらなければ、うちの息子を考えていただけませんか? 仕事ばかりで結婚する気配もなくて困ってるんですよ』
父と拓真は冗談だろうと聞き流すが、碧の父はやけに熱心だった。
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