エリート外科医との政略結婚は、離婚予定につき~この愛に溺れるわけにはいきません~
「でも。私はお兄ちゃんを犠牲にして音楽を続けてるから、いつか恩返ししたいって思ってて」
「それを言うなら俺の方が珠希を犠牲にしたんだ」
「……え? どうして?」
突然声を荒げた拓真に、珠希は困惑する。
「ごめん。違うんだ。俺は自分がそうしたくてピアノから離れて会社に入ったんだ。というより、ずっとそうしたかったんだ。珠希に社長は向いてないなんて言ったけど、そんなの後付けの言い訳だ」
「え……? でも、お兄ちゃんはあれだけピアノが上手で才能もあったし――」
「コンクールに出場すれば優勝して、CDを出したら大ヒット。おまけに見た目はこんなだから女性ファンも多くてコンサートはいつも満員御礼」
珠希の言葉に被せて、拓真が軽やかな口調で続きを口にする。
「たしかにその通りで、間違いないけど。その自覚があったら、ピアニストの道に進めばよかったのに。会社なら私が継いでもよかったから。だって父さんも母さんもどっちが継いでもいいって言ってたでしょ?」
「だから焦ってたのよね」
「……麻耶さん?」
それまで拓真の隣で珠希たちの話に静かに耳をかたむけていた麻耶が、突然口を開いた。
「拓真さんは、もともとピアノにそれほど執着してなかったの。どちらかといえば、お父様のような、とことん真面目な経営者になりたかったのよ」
「……そうなの?」
珠希の問いに、拓真は「そうだよ」とあっさり答える。
「今も昔も、父さんみたいにきれいごと上等でとことんまっとうな仕事をする経営者になりたいんだ。父さんも母さんも、俺でも珠希でもどっちが後を継いでもいいって言ってたから、ちょっと急いだ。あまりにもピアノの才能を発揮しすぎてあのままだと後戻りできそうになかったからな。ギリギリのところでやめておいた」
「……なんだかお兄ちゃんがいやな人に見えてきた」
才能を発揮し過ぎるとかギリギリのところでやめたとか、印象が悪すぎる。
「それを言うなら俺の方が珠希を犠牲にしたんだ」
「……え? どうして?」
突然声を荒げた拓真に、珠希は困惑する。
「ごめん。違うんだ。俺は自分がそうしたくてピアノから離れて会社に入ったんだ。というより、ずっとそうしたかったんだ。珠希に社長は向いてないなんて言ったけど、そんなの後付けの言い訳だ」
「え……? でも、お兄ちゃんはあれだけピアノが上手で才能もあったし――」
「コンクールに出場すれば優勝して、CDを出したら大ヒット。おまけに見た目はこんなだから女性ファンも多くてコンサートはいつも満員御礼」
珠希の言葉に被せて、拓真が軽やかな口調で続きを口にする。
「たしかにその通りで、間違いないけど。その自覚があったら、ピアニストの道に進めばよかったのに。会社なら私が継いでもよかったから。だって父さんも母さんもどっちが継いでもいいって言ってたでしょ?」
「だから焦ってたのよね」
「……麻耶さん?」
それまで拓真の隣で珠希たちの話に静かに耳をかたむけていた麻耶が、突然口を開いた。
「拓真さんは、もともとピアノにそれほど執着してなかったの。どちらかといえば、お父様のような、とことん真面目な経営者になりたかったのよ」
「……そうなの?」
珠希の問いに、拓真は「そうだよ」とあっさり答える。
「今も昔も、父さんみたいにきれいごと上等でとことんまっとうな仕事をする経営者になりたいんだ。父さんも母さんも、俺でも珠希でもどっちが後を継いでもいいって言ってたから、ちょっと急いだ。あまりにもピアノの才能を発揮しすぎてあのままだと後戻りできそうになかったからな。ギリギリのところでやめておいた」
「……なんだかお兄ちゃんがいやな人に見えてきた」
才能を発揮し過ぎるとかギリギリのところでやめたとか、印象が悪すぎる。