エリート外科医との政略結婚は、離婚予定につき~この愛に溺れるわけにはいきません~
「まあ、そうだよな。だけど、ピアノの才能があるからって全員が全員ピアノを弾きたいわけじゃない。俺がそうなんだから、珠希が引け目を感じる必要もない。逆に、珠希が社長になるチャンスを奪った俺の方が引け目を感じるべきなんだ」
「……そう、なのかな」
あまりにも想定外の話に、珠希は理解が追いつかない。
ピアニストを目指す大多数が、今も和合拓真を目標にしてレッスンに励んでいるというのに。
本人は、その才能に未練など持たず、別の道に進んでいる。
それこそ本来自分が望んでいる道に。
「それに、珠希は音楽が好きだろ? やめようと思ったことはないよな」
「うん……それはないかな。音楽って楽しいから」
その思いを子ども達に伝えたくて、珠希は今の仕事を続けている。
「珠希のその気持ちに、碧さんはすぐに気づいたみたいだな。そうでなきゃ家にわざわざ防音室を作ったうえに、最上位のグレードのエレクトーンをプレゼントしないだろ」
「え、誰から聞いたの?」
そのことは、まだ誰にも話していない。
そのうち自宅に家族を招いたときにでも自慢しようと考えていたのだ。
「この間、会社の近くでばったり河井さんに会ったんだよ。そのときに教えてもらった。碧さんが珠希を大切にしているのが丸わかりで、河井さんの方が照れくさかったって笑ってた」
「……うん。すごく大切にしてくれてる」
「珠希も、彼を大切にしてやれよ。毎日人の命を預かっていて気が抜けないんだから、せめて病院を離れたら気が休めるように、な」
立場は違うが、製薬会社という人の命に直結する職場で働く拓真には、医師の思いが少なからず理解できるのだろう。
軽い口調で言っているが、拓真の目は真剣だ。
珠希は拓真の隣で変わらず穏やかに笑っている麻耶を見た。
いつもフラットで、顔を見るだけで心が軽くなる。
「わかった。お兄ちゃんにとっての麻耶さんを目指して、精進することにする」
「……そう、なのかな」
あまりにも想定外の話に、珠希は理解が追いつかない。
ピアニストを目指す大多数が、今も和合拓真を目標にしてレッスンに励んでいるというのに。
本人は、その才能に未練など持たず、別の道に進んでいる。
それこそ本来自分が望んでいる道に。
「それに、珠希は音楽が好きだろ? やめようと思ったことはないよな」
「うん……それはないかな。音楽って楽しいから」
その思いを子ども達に伝えたくて、珠希は今の仕事を続けている。
「珠希のその気持ちに、碧さんはすぐに気づいたみたいだな。そうでなきゃ家にわざわざ防音室を作ったうえに、最上位のグレードのエレクトーンをプレゼントしないだろ」
「え、誰から聞いたの?」
そのことは、まだ誰にも話していない。
そのうち自宅に家族を招いたときにでも自慢しようと考えていたのだ。
「この間、会社の近くでばったり河井さんに会ったんだよ。そのときに教えてもらった。碧さんが珠希を大切にしているのが丸わかりで、河井さんの方が照れくさかったって笑ってた」
「……うん。すごく大切にしてくれてる」
「珠希も、彼を大切にしてやれよ。毎日人の命を預かっていて気が抜けないんだから、せめて病院を離れたら気が休めるように、な」
立場は違うが、製薬会社という人の命に直結する職場で働く拓真には、医師の思いが少なからず理解できるのだろう。
軽い口調で言っているが、拓真の目は真剣だ。
珠希は拓真の隣で変わらず穏やかに笑っている麻耶を見た。
いつもフラットで、顔を見るだけで心が軽くなる。
「わかった。お兄ちゃんにとっての麻耶さんを目指して、精進することにする」