エリート外科医との政略結婚は、離婚予定につき~この愛に溺れるわけにはいきません~
珠希の言葉にうれしそうに顔を見合わせる拓真と麻耶を見ていると、碧に会いたくてたまらなくなる。

「珠希、どうした? まさか碧さんに会いたくなったか?」
「え、ど、どうしてわかったの? まさか顔に出てた?」

図星を指され、珠希は顔を赤くしうろたえた。

「えっと、その。お兄ちゃんたち見てたら、ちょっとだけ」

照れて視線を泳がせている珠希を、拓真と麻耶はクスクス笑い見守っている。

「碧さんもきっと、珠希ちゃんに会いたいって思ってるんじゃない? ううん、絶対思ってる」

麻耶の言葉に、珠希はさらに顔を赤くする。

「そうかな」

期待まじりの小さな声に、拓真と麻耶は、そろって「絶対そう」と声をあげた。

「彼が今まで珠希のためにしてくれたことを考えてみろ。珠希と一緒にいたくて仕方がないってバレバレだ。良かったな、初恋の相手に大切にしてもらえて」
「初恋」

珠希はぼんやりつぶやいた。

「気づいてなかったのか?」
「ううん。愛してることもこれが初恋っていうことも自覚してたけど、改めて口にするとそわそわする……」

珠希は今まで自分には縁がなかった言葉を口の中で繰り返し、そのたびその言葉が心に馴染んでいくのを感じた。

「え、なに?」

気づけば部屋が静まりかえっている。顔を上げると、拓真と麻耶がにやにやしながら珠希を見ていた。

「どうかした?」

きょとんと首をかしげる珠希に、ふたりはぶんぶんと首を横に振る。

「碧さんがすぐにでも入籍したいって言い出した理由が、わかった気がする」

麻耶の言葉に拓真も大きくうなずいた。



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