エリート外科医との政略結婚は、離婚予定につき~この愛に溺れるわけにはいきません~
その晩珠希がタクシーで自宅に戻ったとき、深夜一時を過ぎていた。
拓真と麻耶からは泊まっていくようにと言われたのだが、ここ数時間で得た情報量があまりにも多すぎて落ち着かず、ひとりになりたかったのだ。
それになにより碧の帰りを家で待ちたかった。
帰宅してすぐに入浴を済ませた珠希は、碧とお揃いのシルクのパジャマに袖を通して、ようやく人心地つく。
夜明けまで数時間しかないというのに、目が冴えて眠れそうにない。
あれだけの事実を知らされたのだ、興奮して眠れないのは当然だ。
珠希は眠るのをあきらめ、リビングのソファに腰を下ろした。
家を出る間際に麻耶が持たせてくれたハーブティーを淹れて味わっているうちに気持ちが落ち着いてくる。
目を閉じると、浮かんでくるのは碧の顔ばかりだ。
「会いたいな……」
大宮が珠希の知らないところで強引に見合いの話を進めようとしていたと知って、不安を感じたが、その裏で碧が珠希との見合いを申し出て、さっさと結婚まで進めてくれたことがうれしくて、大宮のことは今やどうでもよくなっている。
別れ際に和合製薬との関係を考え直すと言っていたのも、今思えば珠希との見合いをあきらめなければならない悔しさから出た、捨て台詞のようなものだろう。
きっともう、目の前には現われない。
もし現われたとしても、碧がきっと守ってくれる。
すべてを知った今、珠希にはそう思える自信が生まれていた。